まみ めも

つむじまがりといわれます

趣味で腹いっぱい

七夕はふーたんのお誕生日だった。あさ一番にパジャマ着のままプレゼントを渡す。はぐプリの変身タッチフォンプリハートDXとおともだちピンクの7月号。午後はリクエストのチョコバナナケーキを丸いグラタン皿に作り、夕飯はハンバーグに目玉焼きをのせて、白パンを焼いた。夕飯のあとで、バナナとカラースプレーチョコでぐるりと飾りつけたケーキにろうそくを4本たてて、みんなでハッピーバースデーを唱和した。4本のろうそくの炎ははなかなか消えなかった。思わず吹き消しそうになってしまうのをこらえる。ふーたんの着ていた緑のドレスにまぶされたラメが部屋じゅうに舞い降り、4日たってもげんちゃんの顔にきらきらがくっついている。

趣味で腹いっぱい

趣味で腹いっぱい

 

ト。

上を目指さないから、趣味は素敵。結婚後、絵手紙・家庭菜園・小説と趣味に興じる鞠子。仕事一筋の銀行員・小太郎も次第にその世界に惹かれるが!? 『しんぶん赤旗』連載を加筆修正し単行本化。

エッセイかと思って読んだら軽妙な小説だった。なにかを成し遂げようとしない鞠子の姿勢にちょっとほれぼれする。

夜露死苦現代詩

はちみつと茂蔵の無調整豆乳をいれたコーヒーを毎朝飲む。うるおう豆乳はアセスルファムKのあと味がべろに残るのが気になって、飲めなくなった。やっぱり茂蔵で生おからを買ってきてもらい、ツナと生野菜を刻んで塩もみして混ぜ込み、酢とマヨネーズで和えてサラダにする。パッケージにシンプルに書かれている、おからは宝、と韻を踏んだキャッチコピーにそそのかされてもりもり食べる。

iPhoneがいかれてきて、画面の左端だけタッチパネルが反応しなくなった。ときどき、パスワードの入力や変換で出せない文字があるけれども、たいした不便もない。ほんとうは、iPhoneだって、なくてもたいした不便はない、といいきりたいけれど、それは嘘。

夜露死苦現代詩 (ちくま文庫)

夜露死苦現代詩 (ちくま文庫)

 

ト。単行本で。

寝たきり老人の独語から暴走族の特攻服、エミネムから相田みつをまで。現代詩だなんてまわりも本人も思ってもみないまま、こっちに挑んでくる言葉の直球勝負。ほんとうにドキドキさせてくれる言葉がここにある!
痴呆系―あるいは胡桃の城の山頭火
点取占い―あるいはショウユ味のシュールレアリスム
木花開耶姫の末裔たち―あるいは湯に煙るお色気五七五
池袋母子餓死日記―あるいは遺書という暗楽詩
死刑囚の俳句―あるいは塀の中芭蕉たち
玉置宏の話芸―あるいは分速360字のトーキング・ポエトリー
32種類の『夢は夜ひらく』―あるいは無限連鎖のモノローク
仏恥義理で愛羅武勇―あるいは暴走する刺繍の詩集
最大の印税が最高の賞賛である―あるいはヒップホップする現代詩
あらかじめ答えられたクイズ―あるいは反省と感謝のループ
少年よ、いざつむえ―あるいは輝ける言葉のサラダ
肉筆のアクション・ライティング―あるいはインターネットのエロ事師たち
アイ・シング・ザ・ボディ・エレクトリック―あるいは箱の中の見えない詩人たち
人生に必要なことは、みんな湯呑みから教わった―あるいは詠み人知らずの説教詩
ヒトが生んでヒトが驚く―あるいは見世物小屋の口上詩
肉体言語としてのラップ・ミュージック―あるいは渋谷の街の即興歌人

池袋の餓死日記や死刑囚の五七五とおなじ言語で相田みつをやエロサイトの口上や湯呑みの人生訓がある。人と人のわかりあえなさというものを感じながら読むしかなく、この世界に自分はいるのだなと思う。

男と女

遊歩道の枇杷の木に鳥があつまって樹下に実がちらばっているので、一応人目をはばかりながら届きそうなところの枝をつかまえて手元に引っ張り、やっとこさひとつだけ、無傷の実を手にとれた。冷蔵庫に冷やしてうぶ毛のはえた皮をむき、ほんの小さな実をまるのまま口にいれる。ちいさな身に種がおおきくて、果肉はかけらのようにわずか。味だってあるようなないような。このこころもとなさがいかにも枇杷で満足する。今年の枇杷は、このひとつだけにとどめておこう。枇杷のようにうぶ毛につつまれていたあかんぼうも、こまかい毛がおちて、手ざわりがちがってきた。小学生のとき、近くの畑の枇杷をランドセルをしょったまま盗み食いしたことをいつまでもしつこく思い出す。

ゆりかごの 上に
びわのみが ゆれるよ
ねんねこねんねこ ねんねこよ

プ。

フランスのドービルにある学校の寄宿舎に娘を預けて、パリで一人暮らしをしているアンヌ(アヌーク・エーメ)。一方、カーレーサーのジャン(ジャン=ルイ・トランティニャン)もまた同じ寄宿舎に息子を預けていた。子供を通して知り合った二人には、それぞれ夫と妻を亡くしたという共通の過去があった。やがて二人は、互いへの思いと辛い過去の間で揺れ動き……。

男のモノローグがしみったれていで笑える。女はいっさい内面を明かさない。アンヌの美貌がすごいので、演技もなにもいらないからカメラの前に佇んでいてくださいという感じ。

アースダイバー

子の一か月健診があり、ベビーカーにのせて出かける。産院の通りをはさんだ向かいにあるスターバックスコーヒーで冷コーヒーをマイボトルに詰めてもらい、はちみつと牛乳を足したのを、ごくごくごくと飲んでから病院へいったら、待合室は椅子が埋まるほど混んでおり、結局すべてが終わったのは二時間半後だった。お昼を食べ損ねて、もう一度スタバに寄り、ワンモアコーヒーのチケットで冷コーヒーを一杯もらい、やっぱりはちみつと牛乳を足して、チョコレートいりのクッキーをかじりながら冷コを飲み干し蒸し暑いなかを歩いて帰った。わが家の子たちの中では小さめながら母子手帳に「順調です」と記してもらったので、ほっとして、なんだかとてもくたびれてしまった。げんちゃんは知らん顔でこくこくお乳を飲み、寝るかとおもえば、いきみ、うなり、ぶりぶりやり、よく泣く。いつまでも小さいままでいてほしいような、おおきくなるのがたのしみなような、どっちにしても、取り返しのつかない日々であるという感を強くする。ほんとうは、どんなときだって取り返しなんてつかないと頭ではわかっているのに、あかんぼうと過ごすと、ものすごくその感じが迫ってくる。

増補改訂 アースダイバー

増補改訂 アースダイバー

 

ト。

縄文、そして「海民」へと日本のルーツを遡り、地形の無意識、文化と自然の相互作用を探るアースダイビングは、見えない東京を教えてくれる。隅田川多摩川大宮八幡宮を追加。全24点アースダイビング・マップ付き。

ウォーミングアップ(東京鳥瞰)/湿った土地と乾いた土地(新宿~四谷)/死と森(渋谷~明治神宮)/タナトスの塔(東京タワー)/湯と水(麻布~赤坂)/間奏曲(坂と崖下)/大学・ファッション・墓地(三田・早稲田・青山)/職人の浮島(銀座~新橋)/モダニズムから超モダニズムへ(浅草~上野~秋葉原)/東京低地の神話学(下町)/森番の天皇(皇居)

読みやすい本ではないけれど、法螺というのか、うそかまことかという話が繰り広げられるのがおもしろく、高校のときの国語教師を思い出した。こういう知性の展開はセクシーだと思う。タナトスのひそむ東京というのはすごく気に入った。

もの書く人のかたわらには、いつも猫がいた

日に日にまるくなって二重あごになり、沐浴のときに首のくびれからゴミが取れる。きのうは首すじを撫ぜるとするすると10センチをこえる糸くずが出てきた。思わず浴室の床に細長くのばして見つめてしまった。

留守番のとき、げんちゃんをベビーカーにのせてふーたんと最寄りのコンビニまでいき、チョコレートとクリームのドーナツを買って、ソファで頬張りながら録画しておいた最終回の「何食べ」をみる。久しぶりにはまったドラマだった。家にいる時間が長いのでテレビを見ることが増えた。いますごく気に入っているのは、ジャワカレーのコマーシャルで、反町隆史のカレーを食べたときの表情がすごくいい。反町隆史が琴線にふれる日が来るとは。甘長とステーキ肉でつくるジャワカレーはこの夏の宿題。

ト。

作家はなにゆえ猫を愛す? NHK「ネコメンタリー 猫も、杓子も。」を書籍化。角田光代吉田修一養老孟司ら人気作家6人が“個性あふれる愛猫との日常”を語る。125点の写真、番組書き下ろし作品も収録。

角田光代とトト

任務十八年-小説-

吉田修一と金ちゃん銀ちゃん 

拝啓金ちゃん銀ちゃん-エッセイ-

村山由佳ともみじ

いつか、同じ場所-短篇-

柚月裕子とメルとピノ

振り返れば猫がいる-エッセイ-

保坂和志とシロちゃん

シロちゃん-エッセイ-

養老孟司とまる

まるのこと-エッセイ-

作家と猫が近く遠くうつっている写真、距離感がみえてきゅんとする。保坂和志の生活の猫っぷり、だけどけして触らせないシロちゃんとか、切ないようだけれどそれがふたりなのだ。角田光代の家のトトは「じっとり」した感じが写真でもわかっておかしい。写真の背景に本棚が入っていたりすると、なんの本があるのか目を凝らしてしまうのは相変わらず。これまで知らなかった作家の顔や洋服をみて、本棚の背表紙の字面に受ける印象とはずれているような、かといってもともとどんな人を想像していたのかはよくわからない。

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン

きょうでひと月が過ぎ、プラスチック製の洗濯かごでやる沐浴が窮屈そうになってきた。家にいる時間が長いので、ラジオから流れてくる音楽にピンとくると、YouTubeで検索してかけなおしたりする。目を使うと疲れるので、耳だけで。

Cat Power “The Greatest”

m.youtube.com
Austin Mahone “Dancing With Nobody”

m.youtube.com

世の中にはいろんなきらきらしたものが溢れているなあ。鏡の中のつかれたすっぴん、ぼさぼさの頭、ぶよぶよのお腹、かちこちに張ったおっぱい。その腕の中にある無垢のひとみ。なにもかもチャラにしてしまうジョーカーを手にしてしまった。

プ。

L・ディカプリオ、T・ハンクスの2大スター共演で、パイロット、医師、弁護士になりすました実在の詐欺師F・W・アバグネイルの半生を描く、S・スピルバーグ監督の痛快犯罪コメディー。16歳のフランクは、両親の離婚がきっかけで家を飛び出し、詐欺師となる。偽造小切手を作り、パイロットになりすまして世界を飛びまわるフランクを、FBIが追いかけるようになるが…。1960年代を再現した、美術や衣装もみどころ。

ディカプリオが大胆な行動をするたびに小心者の心臓が縮みあがって、たまらんかった。詐欺師には向いてないと思う。

 

アンカーウーマン

庭の物置から四年ぶりにひっぱりだしたベビーカーが埃まみれだったので、風呂場で汗だくで丸洗いをして、乾かしておいた。おつかいに最寄りのコンビニに出たのが通院をのぞいてはじめてのおでかけで、娑婆の空気に盛り上がって、おこもりのあいだに新発売になっていたフラペチーノを吸った。きょうは少し距離をのばしてひと月ぶりの図書館へ本を返しにいく。おなかのなかにいたものはベビーカーの上で陽射しに目を細めてうにゃうにゃしている。予約の本を受け取り、帰りにセブンイレブンに足をのばしたけれど、おめあてのカスクートはなかった。つわりのときに味覚の圏内だった数少ないメニューが、いまどんな味がするのか確かめたい。カスクートの入荷は店でばらつきがあるらしく、この店では一度も見かけないけれど駅前の店にはずらりと並んでいる。もうすこし娑婆の空気になじんだら駅前まで出かけたい。

アンカーウーマン [DVD]

アンカーウーマン [DVD]

 

プ。

知性と美貌を併せ持つTVキャスター、アンカーウーマンに憧れる女性を描いたファンタジックなラブ・ストーリー。働きながら夜学に通うタリーの夢はニュース番組のアンカーウーマンになること。マイアミの小さなローカル局に入社した彼女は、天気予報のキャスターとして張り切っていた。彼女の上司は、かつて全国ネットのメイン局で人気・実力ともにトップのアンカーマンだったウォーレンだった……。

1996年公開なので、このころロバート・レッドフォードは50代、ミシェル・ファイファーは30代。トレンディー・ドラマをみるような面はゆさで、まともに見てられんかった。思えば遠くへきたもんだ、って、トレンディーだったことは一度もなかったっけ。