まみ めも

つむじまがりといわれます

料理と利他

先週は半年ぶりの通院があり、昼に会社をあがった。アイスコーヒーに牛乳とはちみつを入れてもらってサンドイッチでひと息ついたあとで、ケーキ屋でこの秋はじめてのモンブランを(ふたつも)買い、病院で受付と採血を済ませ、診察までの時間はブックオフをぶらぶらする。文庫の均一から四冊。440円也。

死ぬ気まんまん 佐野洋子

愛のひだりがわ 筒井康隆

貝がらと海の音 庄野潤三

完全版 1★9★3★7 イクミナ (上) 辺見庸

庄野潤三はどの本が手元にあるのか分からないけれど、ダブったら誰かにあげればよいのでとりあえず買う。診察では「薬さえ飲んでれば病気でもない」と言われた。

「しっぽちゃん」がすいすい泳ぐようになった。

ト。

2020年6・8月に開催された、料理研究家土井善晴政治学者・中島岳志によるオンライン対談「一汁一菜と利他」を完全再現。今私たちが考えなければならない問題を、料理を通じて明らかにする。

土井善晴の「おかずのクッキング」は毎週録画してみているけれど、土井先生がゴッドファーザーの「料理は男の嗜みだ」というセリフを引用するところが一番こころに残っている。料理というよりは土井先生を見ている感じ。

作家と犬

はじめ十二匹いためだかは半分まで減った。威勢のいいのが一匹いて、水換えのときにぴちぴち跳ねる。せいちゃんが「おやぶん」と名前をつけた。ほかのは見分けがつかない。おやぶんが次々に産んだらしい卵の中のふたつに目玉が見えるようになって「めだまちゃん」と呼んでいたけれど、そのうちひとつは「しっぽちゃん」に成長した。透き通った体に目がぽちぽちと黒い、小さな小さなそれをじいっと眺めているとときどきぐるんと向きを変える、ような気がする。アレックス・シアラーの「スノードーム」に出てくる小さな小さな世界みたい。

ト。

犬の定義と語源

ヒト、イヌに会う 押井 守

老人と老犬 団 鬼六

犬猫の仲 米原 万里

「動物つれづれ草」より「イヌ」 手塚 治虫

平泉栄吉宛書簡-檀一雄連名- 坂口 安吾/檀 一雄

犬の銀行 向田 邦子

犬の話 小沼 丹

動物同棲 草野 心平

我が犬の系譜 椎名 誠

クロや 杉浦 日向子

あとがきにかえて-イアン・フィリップス『ロスト』 『犬は本よりも電信柱が好き』より- 吉野 朔実

犬の名は。 高橋 久美子

犬と男 田辺 聖子

犬馬鹿 江藤 淳

親ゆずりの犬好き 幸田 文

愛としての犬、そして猫 服部 みれい

駄犬・駄主人 徳川 夢声

犬の瘡蓋 荒畑 寒村『フクチャン』より 横山 隆一

人間、土に還るもの 深沢 七郎/中上 健次

イヌはなぜワンワンと吠えるか 戸川 幸夫

犬のわる口 田中 小実昌

牧場 長谷川 町子

犬が西向きゃ 柴田 元幸

わが家の動物記 山田 風太

イヌキのムグ 辻 まこと

イヌのうた 室生 犀星

一草庵日記』より 種田 山頭火

ゆっくり犬の冒険レインコートの巻 クラフト・エヴィング商會

朝の散歩 石井 桃子

『雨はコーラがのめない』より 江國 香織

とにかく散歩いたしましょう 小川 洋子

犬にも劣る… 安岡 章太郎

「野性」と付き合う 梨木 香歩

チャンプのこと 池内 紀

海の散歩道 鴨居 羊子

犬の俳句 尾崎 放哉

いつも見ている 吉本 ばなな

芸術の神様 山本 容子

ジロウ惜別 舟越 保武

ジルの話 寺山 修司

犬 金子 みすゞ

犬のパピルス 管 啓次郎

ぼくは世界的犬恐怖症 安西 水丸

一代目ハラス 中野 孝次

飼犬に手を嚙まれる 白洲 正子

訓練士とグレイ/絵描きとグレイ いせ ひでこ

愛犬家心得 川端 康成

川端康成が仔犬を抱いている写真、表情がほころぶのを堪えているような苦虫顔がいい。仔犬が似合わない選手権があったらかなり上位に食いこむと思う。

ジュニア版日本文学名作選6芥川龍之介 羅生門・トロッコ

夏が唐突に終わってしまい、秋の始まりの金木犀もあっという間に花が落ちて、百日紅だけが魔法のようにずっと咲いている。夕暮れがどんどん早くなる。

夏休み前にせいちゃんが理科の先生からめだかを何匹かわけてもらい、それはそれは大切に育てている。いくつか卵を産んだけれどなかなか孵らない。

家の本棚からせいちゃんが引っ張り出してきて一緒に読む。

芥川龍之介

羅生門 / 6

鼻 / 17

芋粥 / 29

手巾 / 58

戯作三昧 / 72

枯野抄 / 115

毛利先生 / 130

蜜柑 / 154

魔術 / 161

杜子春 / 176

ロッコ / 196

報恩記 / 205

仙人 / 234

三つの宝 / 241

白 / 257

子供の病気 / 272

蜃気楼 / 283

解説・東京大学教授 高木卓 / 304

せいちゃんは、魔術、三つの宝、白がよかったという。魔術はいいよねえお母ちゃんも好きだなあと盛り上がったあとで解説を読んだら展開が読めて凡庸というようなことが書いてあってばっさり斬られた。

マスクは踊る

ゆうべは十五夜。風呂上がりに寝支度をすませて二階のベランダにあがり、屋根や壁に切り取られた空にあかるい満月をながめる。まぶしくてじっと見ていられないくらい。ほてった肌に夜風が気持ちいい。「でたでたつきが」をみんなで歌う。窓を開け放して眠ると朝方にひんやりとした空気が部屋をうずめ、ふとんにくるまると最高に気持ちいい。ずっと秋のはじまりでいいのではと思ってしまう。でも、ずっと秋のはじまりだと秋ははじまりを失ってしまうのだな。

ト。

通販CMのえげつなさに目を見張り、ズルばかりはびこる政治に赤面しつつ、コロナ禍のマスク顔観察に余念がなく…。東海林ワールド全開のエッセイに「タンマ君」傑作選を付す。『オール讀物』『週刊文春』掲載を単行本化。

東海林さだおを見つけたせいちゃんが、トーカイバヤシさんの本、貸して、というので、ショージと読むんだよ、と教えたら、しばらくして、ショーリンジさんの本読み終わった?と聞いてきた。惜しいけどちがう。ショーリンジを経てついにショージがインプットされた。

十角館の殺人

金木犀、今年は11日の土曜日が初日だった。副鼻腔炎がくすぶり続けて治らないので秋の気配がわからないのではと心配していたけれど大丈夫だった。耳鼻科に通いカルボシステインとフェキソフェナジンをひと月ばかり飲み続けているけれど、よくもならないし悪くもならない。ナファゾリンの点鼻薬にも手を出した。鼻から薬を吸い込むときに、レオンのゲイリー・オールドマンがキメているときの姿(あっちは錠剤だった気がする)が浮かぶ。

エフ本。

断崖絶壁で囲まれた島にある、十角形の奇妙な館を訪れたある大学のミステリ研究会の7人。彼らを襲う連続殺人の謎。結末に待ち受ける「衝撃の一行」とは? 綾辻行人のデビュー作。

これまで音のない文字列だった綾辻行人が音を得てあやつじゆきとになった。見事に裏切られる展開。

 

死ぬまでに行きたい海

保育園のお迎えにでるときにぽつぽつと地面を水玉にしていた雨がさーっと降りはじめて洋服をしっとり濡らす。雨具の支度がないので濡れるのをおかまいなしに、ぴちぴちちゃぷちゃぷを歌いながら三人で歩いていたら、黄色い雨合羽をはおったふくちゃんが遊歩道の先から歩いてきて傘を二本さしだしてくれた。なんだかものすごくはしゃいでしまい、お母ちゃんなんだなあということを、母になって11年も経つというのにしみじみと思った。ふくちゃん、これは日傘だよ。雨が降ると金木犀のにおいが濃くなる。

ト。

焚火の思い出、猫の行方、魅かれる山…。出不精を自認する著者が、それでも気になるあれこれに誘われ、気の向くままに出かけて綴った、新しくてどこか懐かしい見聞録。全22篇を収録する。『MONKEY』連載を単行本化。

しぬまでにいきたい、と頭の中で文字を読むと、行きたいと生きたいが交差してバグったみたいになる。現と夢のあわいで確実に本当のツボを押す岸本佐知子

エデュケーション

暑い日が戻ってくると信じて買っておいた冷麺を食べるタイミングがつかめなくなり、冬になるよりはと思って茹でて昨日のお昼に食べた。キムチとゆで卵とハムをのせて酢をたらす。家でつくる冷麺に梨をのせる意気地がない。たまに日差しが出ると、どこに残っていたのか蝉が鳴き出してまだここにある夏の成分を思い出させてくれる。

ト。

モルモン教サバイバリストの両親のもとに生まれたタラは、学校にも行けず、医療機関も受診せずに育つ。10代半ばに、大学に通うことを決意し、独学で大学資格試験に合格し…。壮絶な人生の回顧録

ハードすぎる人生が綴られているけれどもまだこの家族があり続けていることがものすごい。