まみ めも

つむじまがりといわれます

男の愛

つつじが満開を過ぎて花を地べたにこぼしている。薔薇も花盛り。あじさいが日に日に育っている。いちごはおしまい。たんぽぽも綿毛がとんでしまった。

土曜の午前、皮膚科ついでに浦和宿古本いち。

ピアノの音 庄野潤三

コブナ少年―横尾忠則十代の自伝 横尾忠則 

庄野潤三はみつけたら必ず買う。

日曜の午後にも古本いち。

今、何してる? 角田光代

嘘ばっか 佐野洋子

誰かのことを強く思ってみたかった 角田光代 佐内正史

B級ニュース図鑑 泉麻人

ト。

まったく男が男に惚れるってのは厄介なもんだ。生来の荒くれ者である「清水次郎長」が、養父母との確執や同級生・福太郎への初恋を経て、国を捨てやくざの世界で「男になる」までの心理を、町田康が繊細かつ軽快に描く。

「トゥクン」のお話。

ワンピースの女

一度だけ自分勝手がしてみたいメトロノームの五月の疲れ/杉崎恒夫

ふとこの短歌を思い出して自分勝手がしたくなり、金曜の午後に休みをとった。ゴールデンウイークにふたごがうまれた友だちに会いにいく。デパートを冷やかしてからパイとブーケをお土産に買った。マミーズのパイは雲の上のレモンパイという名前で、クリームが山盛りになっている。クリームがつかないように、箱の蓋を浮かせて渡してくれた。てんこもりのクリームが崩れないように人通りのすくない道を選んでいく。ふたごの天使は並んですやすやと眠っており、お茶を飲んで、そのうちうごうごしはじめたふたりを順番にだっこさせてもらった。発光していた、ふたりとも。赤ちゃんのいる時間の流れにいつまでも浸りたい気分。

ト。

デザイナーの友人が作った麻のAラインワンピース、気持ちが落ち着く黒いワンピース…。50歳以上の61人の女性のお気に入りの一着と、生きていくうえで大切にしていることを紹介。『暮しの手帖』連載を再構成して単行本化。

このごろ自分に似合うものがわからない。鏡の中はあまり見ないようにしている。

今夜は眠れない

駅の構内につばめが巣をつくっていて、朝、流線型の軌道が出たり入ったりしている。つばめを目で追えず飛翔の残像だけがみえる。通勤の途中に玄関先から二階のベランダまで薔薇が生い茂る家があって、少しだけ遠回りする。

異動した部署で、だれかのタイピングのミスから自然にお豆と呼ばれるようになった。伝言を残すときなど、豆と添える。タイピングのミスにはかわいさが宿っている。好きな豆は金時豆

エフ本。

放浪の相場師、と呼ばれた男が、なぜか母さんに現金で5億円もの遺産をのこし、平凡な一家に暗雲がたちこめはじめる。壊れかけた家族の絆を取り戻すために、僕は親友の島崎と謎の解明に乗り出したが…。

島崎が中学生にしてはませすぎていて勝手に心配。

元彼の遺言状

週末は在宅で研修を受けていた。家族がいるので、ひとりになれるのは寝室しかなく、布団の上でパソコンをぽちぽちしながら講義をきいていた。カメラをオンにしている重鎮の先生が掛け軸を背景に煙草をくゆらしておりなかなかの見応え。テレビにうつる自分の姿や話し方の情緒のなさに愕然としたのだけれど、掛け軸の似合うような風情はどうしたら身につくのだろう。ときどきこどもたちがドアの隙間から様子を覗きにきてなにか囁いていく。

去年の春に庭先に植えたいちごが、ランナーをのばして、今年はすこし大きな粒をつけた。頃合いをみて赤くなったのを摘んでたべる。

エフ本。

「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という遺言状を残して、大手製薬会社の御曹司が亡くなった。学生時代に彼と交際していた弁護士の剣持麗子は、「犯人選考会」に参加し、依頼人を犯人に仕立て上げようと奔走するが…。

第19回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。応募したときのタイトルは「三つ前の彼」だそうで、思わず三つ前まで(A long time ago in a galaxy far, far away…)遡ったけれど、ろくな男が出てこない。ダメじゃない男はダメだと思っていたのでしかたがないのだけれど、それにしてもひどいエピソードが現在進行形でうまれている。剣持麗子だったら絶対結婚しなかった。

〆切本2

連休明けだし雨だし寒いしでとことんブルーが上塗りされるマンデーを乾杯で明るくしようと仕事を切り上げて同期や先輩と居酒屋に繰り出してビールをがぶ飲み。次の日、宵越しのアルコールでふわふわして駅の階段を踏み外しそうになりながら会社に向かっていたら、テレビにうつっていることに気づいた何人かの人から連絡が入った。インタビューを再編集したものがおはよう日本のなかで流れるというので予約録画しておいたのを帰ってから見た。菓子パンの袋は舞っていなかった。寝ぐせはきちんと直そうと思う。

寝るときになって、せいちゃんが布団にきて、テレビを見たらじいじに会いたくなっちゃったと言うので、一緒になってめそめそした。

NHKのディレクターさんからは、これでひと通りの報道は終わりだという連絡がきた。わたしは何もしてないが一緒に乾杯で打ち上げしたい。

ト。

❖ 目次
学問のすゝめ 福沢諭吉
はじめに

Ⅰ章 今に死ぬ、どうしても書けぬ
作家の生活 源氏鶏太
書簡 明治四十年 二葉亭四迷
気まぐれ日記 大正十二年/十三年 武者小路実篤
夜なかに思つた事 森鷗外
手紙 大正十一年 北原白秋
明治四十二年当用日記 石川啄木
当分原稿御依頼謝絶 山本有三
手紙 一八六六年 ドストエフスキー
スランプ 夢野久作
手紙 大正八年/十年 芥川龍之介
坂口安吾との往復書簡 昭和二十九年 石川淳
愛妻日記 昭和五年 山本周五郎
書簡 昭和七年 小林多喜二
義務 太宰治
灰色の皺 松本清張
永久未完成型、いつもトルソー 丸山眞男
『放送朝日』は死んだ 梅棹忠夫
妥協する地点 安岡章太郎
井上ひさしの遅筆詫び状 井上ひさし
編集後記 『面白半分』編集部
かんづめ 宮尾登美子
有眠 向田邦子
引っ越しだったんです。 川上弘美
約束 リリー・フランキー
愛の対応、余生は反省 川上未映子
だれが理解するかあ、ぼけ。 町田康

Ⅱ章 編集者はつらいよ
手紙/はがき 昭和八年/十一年 萩原朔太郎
虚子さんの文章 滝井孝作
手紙/はがき 昭和四年/六年/十五年/十六年 堀辰雄
拝啓 編集長がた様 深沢七郎
作家と、挿絵画家と、編集者と 五味康祐
待つこと 小川国夫
バカラシ記者はつらいのだ 赤塚不二夫
変人 吉村昭
野坂昭如「失踪」事件始末 校條剛

Ⅲ章 〆切タイムスリップ
さようなら 團伊玖磨
「骨の肉」の思い出 河野多惠子
カンヅメ稼業に悔あり 五木寛之
神保町 2 片岡義男
けもの24時間 高橋留美子
一枚の写真、妻のヒトコト-
嫌になった、そのときに 椎名誠
国境と締切り 平出隆
自由であるということ 村山由佳
新しいスタート さくらももこ

Ⅳ章 助けておくれよ、家族
妻と作家は両立するか 神近市子・岡本かの子・今井邦子・宇野千代・中條百合子・美川きよ・平林たい子
愛猿記 子母澤寛
書簡 昭和九年 川端康成
異国の女への手紙 一八三三年 バルザック
一杯亭綺言 横溝正史
字を書く手 辻佐保子
『銀杏散りやまず』歴史紀行 辻邦生
おそ起きは三文の得 田中小実昌
執筆の日々 澁澤龍子
随筆家失格 澁澤龍彥
ミステリー作家の二十四時間 赤川次郎
僕は、とにかくよく眠る 中島らも
骨折り損のくたびれもうけ 三浦しをん

Ⅴ章 〆切幻覚作用
化物 野間宏
研究室裏の空想 木下杢太郎
水木しげる伝 水木しげる
直哉の夢 小川国夫
日々疲々 笹沢左保
腹立半分日記 昭和五十三年 筒井康隆
ストップ!!ひばりくん! 江口寿史
デッドライン 穂村弘
なぜ私たちはいつも締め切りに追われるのか 松尾豊
作家の時間割 冲方丁

Ⅵ章 それでも〆切はやってくる
締切り 井上靖
晩年の父犀星 室生朝子
私の履歴書 室生犀星
まぼろしの七里湖 大庭みな子
締切りがまた来る それが人生 伊集院静
物書き根性 ハルノ宵子
残花亭日暦 平成十三年 田辺聖子
最後の決断 山崎豊子

Ⅹ章 〆切の刑
ハナモゲラ語の思想 タモリ
読者へ 野坂昭如
奥付

著者紹介・出典
〆切のない世界 堀道広

「おなかすいていると思う、ぼく?」と聞いてくる澁澤龍彦のエピソード、再会が懐かしくて調べたら〆切本2をまさしく四年前に読んですっかりそのことを忘れていた。どんどん忘れて何度でも出会いたい。

謎解きミステリー

ふたつめの連休にセイちゃんの誕生日。11歳おめでとうと声をかけたら、12歳だよと返事があった。こういうところはおかあさんにすごく似てしまった。リクエストははま寿司、それとキウイとみかんの缶詰をはさんだビスケットケーキ。はま寿司にいったら、酔っぱらったところでおとうさんが好きだったわさびなすをひと皿もらう。

5日はレッズランドでキッズフェスタ。ふくちゃんがバランスボールドリブルで一等賞をとって、インタビューに「レッズの選手になれるようがんばります」と答えていた。芝生のうえで過ごして日焼けした体にビールがしみて2リットル。

ト。

事件解決のための手がかりは、すべてフェアに配置されている。あなたはこの謎を解けるか-。「本格ミステリー」を収めたアンソロジー有栖川有栖「赤い稲妻」をはじめ、厳選したショートストーリー全3編を収録。

赤い稲妻 有栖川 有栖

意外な犯人 綾辻 行人
流れ星のつくり方 道尾 秀介

流れ星のつくり方、謎めきのほどかれかたが心地よかった。

スプートニクの恋人

カレンダー通りのゴールデンウイークは、すべての休みにきょうだいのサッカーの予定が時間差で入っており、朝にお弁当をつくり、送り出し、はや昼を用意し、送り出し、お迎えに出て、おそ昼をたべ、片付け、落ち着くひまがない。

三連休に挟まれた月曜はだいぶ明るい色あいのブルーなマンデー。傘をもたずに出かけて帰り道の雷雨が頼りなかったけれど、駅を出たところで道ゆく人がサラリーマンも女子高生もそろってスマホを掲げているのでなんだろうと見上げたら空に虹が二重にかかっていた。久しぶりに虹をみたのではしゃいでしまい、お迎えの帰り道でげんちゃんに何度もにじだねえ、きれいだねえと騒いでいたら、次の日、グラウンドの砂にげんちゃんが虹の絵を描いてくれて、ままにじすきでしょ、と言われた。絵らしきものをちゃんと描いたのもはじめてだった。虹を一緒に見た先に思いがけずこういうことが待っているから、やっていけている。

ト。

22歳の春、すみれは生まれて初めて恋に落ちた。広大な平原をまっすぐ突き進むような、激しい恋だった。恋に落ちた相手は17歳年上で、結婚していた。更につけ加えるなら、女性だった…。ミステリアスな恋愛小説。

生まれて初めての恋(がどれだったのか今となってはよくわからない)からずいぶん遠いところまで来てしまった。村上春樹は50歳でこういう話を書いているというのはやっぱりどうかしてるんだろうな。