まみ めも

つむじまがりといわれます

砂に埋もれる犬

自分の人生に「一身上の都合」を使うときが訪れるとはと思わなかったけれども、退職願に一身上の都合でという定型文を添えて提出したので10月7日は一身上記念日になった(たぶんすぐに忘れるので備忘として記しておく)。片づかない仕事や気持ちに折り合いをつける日々に突入している。直接なにがというわけではないけれど、静岡出張でタクシーに乗るために審議書を提出せねばならなかったときに、四回書き直しを命じられたそのうちのひとつが「タクシー以外の交通手段がない」としたためたところを「もっと具体的に記せ」といわれ差し戻された、その徒労は忘れない。

ト。

小学校にも通わせてもらえず、日々の食事もままならない生活を送る優真。そんな彼に手を差し伸べるコンビニ店主が現れ…。家族からの愛を受けぬまま思春期を迎えた少年の魂は、どこへ向かうのか。『週刊朝日』連載を加筆修正。

なかなかの鈍器本(494ページ)でありながら残りのページ数が心配でどうやって決着をつけるのかどきどきしてしまった。いやな感じの話だけどこういういやな感じはそこら中にあってたまたま自分にはあからさまに見えていないだけなのだとも思う。

星へ落ちる

せいちゃん、一泊二日の修学旅行で日光にいってきた。出かける前から、木刀を買うと意気込んでいた。お土産に、家族みんなにお揃いの勾玉のキーホルダー(一つ百円のを六つ買うと五百円になるらしく六人家族のうちにぴったりと思ったらしい)、栃木のいちごパイのお菓子、こまごまと買ってきてくれたけれど、木刀は予算の三千円をオーバーする高級品で買えなかったらしい。代わりといっちゃあなんだが(とわたしが言うのもなんだが)「魂」と縫いとられたリストバンドを買ってきた。愛絆勇魂の四択。けっこうきわどい四択だと思う。この中のふたつを友だちにしているアンパンマンはやっぱりすごいのでは。

ト。

元彼の部屋を出て「彼」と付き合い始めた「私」。「彼」が女と浮気をしていると知り自殺を考える「僕」。突然去った「彼女」を待ち続ける「俺」。一つの愛から始まった三つの絶望と、一人の愛から始まった三人の絶望の物語。

つかれる…こんなつかれることを若者はみんなやっているので?みんなやっていたので?と思い出してみたらそういえばやっていたかもなという気になった。

坊っちゃん

月曜日に風呂場でシャンプーしているときに鼻先に金木犀のにおいがきて、シャンプーの中に金木犀のにおい成分でもまじっているのかなと思ったけれど、つぎの日の帰りの遊歩道であまいにおいが漂って、ことしの秋のはじまりは9月26日。百日紅金木犀は気がついたら咲いていて、なかなか現場を押さえることができない。そんな百日紅はまだ花を残している。ふみちゃんは金木犀のにおいは苦手らしい。確かにやりすぎではってときもある。

セイちゃんが見覚えのない古い新書サイズの坊っちゃんを読んでいて、借りて読んでみたら、小学校の廊下に図書館とは別の自由に読める文庫があるらしく、そこから持ち帰ったものだった。セイちゃん、坊っちゃんはもう三回読んだとのこと。久しぶりに読んでみたら、こんなんだったっけ。マドンナだか小旦那だかみたいな駄洒落がくだらないんだけど、くだらないの中に愛が?

対岸の彼女

三連休の狭間に持病の通院があり、午後で会社をひけた。乗り換え駅の改札の中にあるコーヒーショップでコーヒーを飲む。コーヒーはアイスとホットを行ったり来たり。採血のあとで近くのブックオフで時間を潰すのがお決まりになっている。

夏物語 川上未映子 220円

バイ買 町田康 220円

旅の絵日記 和田誠 平野レミ 550円

半年に一度だけれども、お医者はこちらを覚えているようで、久しぶりだけど久しぶりって感じがしないねとにこにこしている。そういえばこの病院に通うようになってもう11年お世話になっているのだった。血液検査の値に太鼓判を押してもらった。この病院にかよい始めたころのブックオフの均一棚は100円だったり105円だったりしたけれど、いまや110円のものもほとんどお目にかからなくなってしまった。

ト。

30代、既婚、子持ちの「勝ち犬」小夜子と、独身、子なしの「負け犬」葵。立場が違うということは、時に女同士を決裂させる。女の人を区別するのは、女の人だ。性格も生活環境も全く違う2人の女性の友情は成立するのか…?

抄録を読んで、え、そういう話やったん?と思った。

つまらない住宅地のすべての家

焦げめがつくまでグリルで焼いて皮を剥いだパプリカがおいしくて、こんな残酷なことしてごめんなと内心で思いながら週末になるたびに買っている。スーパーにいくと、自分は絶対にたべないげんちゃんが、パプリカをみつけて赤を買えの黄色を買えのと口出しするので素直に従う。

ト。

静かに並ぶ住宅地の家々。ある出来事をきっかけに、それぞれの家の、それぞれの事情が見えてきて…。日々いろいろな思いを抱えて暮らす人々を、たくみな構成と描写で浮き彫りにした長編小説。『小説推理』連載を単行本化。

なにも起こらないが起こる胸をあつくするストーリー。つまらない住宅地のつまらなくない展開。津村記久子かっこいい。

夏物語

先週の金曜日、都内で用を片付けてから、ぷらぷらと銀座まで歩き、地下の静かな店で久しぶりの友だちと乾杯をした。何年ぶりかに会うけれど、いつ会っても昨日わかれたような親しさがあり、しかし離れがたく、終電の間際までしこたま飲んだ。次の日は三時まで使いものにならず、やっとそうめんをふた口すすって、そのあとは迎え酒でまた眠くなり、十時間ぶっ続けでねむった。ほっとしたのだと思う。

ト。

小説家を目指し上京した夏子は、自分の子どもに会いたいと思い、パートナーなしの出産を目指す。そんな中、精子提供で生まれ、父の顔を知らない潤が現れ…。生命の意味をめぐる真摯な問いを切ない詩情と泣き笑いの筆致で描く。

本を開いたのは夏の終わりで、夏子が緑子と巻子と待ちあわせしていたその日が何日か前で、まさしく自分も同じ日に出張で東京駅に戻っていて、針の穴を通るような偶然が本をぐっと引き寄せる。なんでこんなに見に覚えのあるせつなさなのだろう。

だれかのことを強く思ってみたかった

百日紅がまだまだ咲いている。

ふと読みはじめた「スキップとローファー」は能登の片田舎から出てきた女の子が主人公で、ときどき地元のことばと似たような方言が出てくるとうれしい。いまは相手が方言じゃなければうまく話せなくなってしまった。もう地元にいたよりも長い時間をよそで過ごしているんだったな。それでもやっぱりここはよそだと思っている。

古本いちの均一本。110円。

ファインダー

まわる季節

プラットホーム

世界の終わり

夜景

父と歩いた日

おだやかな楽園

押し入れ

レッスン

上等なカーテン

スカイマンション403

光の柱に

ジュテーム

金色の道

見なかった記憶

東京

東京の朝

エッセイなのか短編集なのかわからないままページをめくっているときの定まらない感じは悪くない。佐内正史の写真には、なんだか知っている人がうつっているような気がする。うつっているのは誰も知らない人なのに家族や知人のアルバムを眺めているみたいな知らない時間の記録なのに懐かしさがあって、角田光代もそういう時間の切り取り方をしていた。