まみ めも

つむじまがりといわれます

はじめてわかる国語

はじめてわかる国語実家の風呂にはアンパンマンの風呂マットが敷いてある。アンパンマンの大きな顔のまわりにちいさく主要キャラクターが描いてあるそれを見て、息子氏が、バタ(バタ子さん)、おじ(ジャムおじさん)としきりに言う。というのは、そのマットにはあかちゃんマンやクリームパンダはおるくせに(わたしもすっかりヤキがまわってアンパンマンのキャラクターの名前を覚えてしまった)、バタ子さんとジャムおじさんは描いてないのが気にかかる様子。それで、キャラクターの隙間に描いてあるパン工場のイラストを指さして、ジャムおじさんとバタ子さんはそのなかにおるよ、パンをせっせと焼いとるよ、と話したら、それはそれは目をかがやかしてちいさなパン工場の、さらにちいさな窓に顔をぐいと寄せて覗きこんでいる。見える?ときいたら、真剣なまなざしでこちらを振り返りこっくん頷くのですっかり胸がときめいた。以来、息子氏は風呂にはいるその都度バタとおじの所在を確認している。星の王子さまに出てくる、ウワバミにのみこまれた象の話と似たようなことを、実際に経験するとは思わなかった。
はじめてわかる国語は、毎度ながらブックオフ西原理恵子のイラストにつられて買った。といっても、サイバラ氏のことは、学生のときに研究室に誰かしらが買ってきた週刊の漫画雑誌にのっていたのをときどき拾い読んだぐらいで、書きなぐったようなへたくそな絵にやたらリアルでかなしいエピソードという印象しかない。それで、読んでみたら、サイバラ氏のイラストというのは本文度外視で自由に書きなぐってあって、一般人を一船人と誤字ってあったりするのでやられたとおもった。著者の清水義範というひとは、かつて谷崎の文章読本に影響を受けて、伝わりやすい文章を書くように心がけているということだったが、一方でイラストのサイバラ氏はちっとも伝わりやすさなんてことを考えないで、その伝わりにくさを含めて自分をさらけだしている。そのバランスがおもしろかった。