- 作者: 内田春菊,日本ペンクラブ
- 出版社/メーカー: 福武書店
- 発売日: 1992/12
- メディア: 文庫
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内田春菊 「すてきなボーナス・デイ」
原田宗典 「駅のドラマツルギ」
江戸川乱歩 「目羅博士」
芥川龍之介 「虱」
中島らも 「沈没都市除霊紀行大阪の悪霊」
田辺聖子 「おかしな人」
筒井康隆 「YAH!」
夏目漱石 「硝子戸の中(抄)」
室井滋 「趣味」
遠藤周作 「ニセ学生」
水島裕子 「人形の脳みそ」
清水義範 「冴子」
表紙をめくったら選者紹介の内田春菊の写真がそのまま表紙の絵とおなじでわらってしまう。編集後期によると、春菊さん自身は活字の作品に詳しくないので、無責任にやりましたとのことだったが、たのしんでやったのがわかるようなアンソロジーだった。椎名誠のなんか、笑っちゃうね、まったく、これ読んだら、えのき茸を平静な気持ちでは炒められなくなる、もう、えいっ、えいっ、て、いたぶるちゅうか、いためつけてやるしかなくなっちゃうよね、うふふ、あはは、て感じだ。わたしがいちばんブキミだったのは清水義範のそれで、わたしはどうもこの人の文章が苦手で、西原理恵子と出していた本も、文章の部分ははっきりいってなにひとつ愉しめなかったのだったが、その苦手な文章で谷崎潤一郎の鍵を意識しまくったような日記をやられてしまい、タニザキだったらキモイのも諸手を挙げて受け入れられるのが、このひとのはつゆほども受け入れがたく、だめだだめだと思いながら読み終えてげんなりしてしまった。ワイドショーみたいに下世話で、想像の域をでないのがブキミすぎる。
わたしの出会ったブキミなひとといえば、大学のクラスにいたふたつ歳上の男で、サイクリングに誘われて、夜の砧公園までいったところが、カエルを捕って帰りたいといいだし、ウシガエルを見つけてはママチャリの籠につっこんでいくのだが、カエルなものだから、そのうちピョンと跳ねて逃げ出してしまうのを、また捕まえて、結局捕まえては逃げられるというのを何度も繰り返していた。見ていたらやたらむかついてきて、しかし道がわからないので帰ることもできず、途方に暮れて眺めていたのだったが、彼は、そのウシガエルをアパートに律儀に連れ帰り、庭に穴を掘り、網を被せてその中で飼っていたらしかったが、そのうち大家にみつかって穴を埋めさせられていた。そのアパートの部屋は、そこらにカエルの糞は落ちているし、彼は蝿などをつかまえてカエルに食べさせているし、そのくせ広末涼子の写真集が本棚にあったりするのだった。ちょっと、あの部屋のことを思い出すとむずむずする。