まみ めも

つむじまがりといわれます

一人の男が飛行機から飛び降りる

月曜日、Maxときと特急はくたかを乗り継ぎして小松に着いた。セイちゃんが、電車のなかでお弁当たべる、と楽しみにしていたので、日曜の夜におかずを用意しておいた。お弁当になにいれる?ときくと、なにかでみたお弁当が頭にあるらしく、おにぎりと、ウインナと、たまごやき、とリクエストをされた。みんなが寝静まった階下で、台所だけ電気をともし、ウインナを炒め、たまごやきを巻いて(丸のフライパンで焼くので両端が細っているのをつまみぐい)、ミックスベジタブルを彩りにいれ、あとは胡瓜の漬けたのとプチトマトという、おそろしく簡単な弁当。朝、おにぎりをつくって、おやつ、着替え、おむつ、おもちゃ、ショルダーバッグと手提げに詰め込み、背中に11キロのフクちゃんをおぶい、セイちゃんと手をつないで外にでたら風がえらく冷たく吹いて、立ちすくんだセイちゃんにフリースのフードを被らせた。道中、フクちゃんがウンチを二回放ち、はくたかが遅れて在来線の乗り継ぎで三十分待たされ、ねむたいセイちゃんがやたらだっこをせがむというイレギュラーはあったが、おおむね平和に過ぎた。夜、実家の風呂に浸かりながら、セイちゃんに、きょうはなにをしたの、ときくと、マックスとはくたかのったの、おべんとたべたの、と答えてくれる。お弁当、なにが一番おいしかった、ときくと、ちょっと考えてから、やきとりおいしかったの、と、それは弁当の中身ではなく越後湯沢で落ち合ったおかあさんがお土産に買ってきたつくね串なんだった。今度はつくねのお弁当にしてやろう。

一人の男が飛行機から飛び降りる (新潮文庫)

一人の男が飛行機から飛び降りる (新潮文庫)

図書館本。表紙のイラストはグレン・バクスターキュビズムな女、風船の父親、いぼ男、石鹸を噛む女の子、地下鉄で鼻からほじくり出したものをぺろぺろ舐め足指のあいだをごしごしこすって味見してちびった小便を吸う美人、そうかと思うとトランクに咲いた花に夜な夜な涙で水やりするというロマンチックも混じっている。「たのしい悪夢」と柴田元幸もいっているが、登場人物も悪夢をエンジョイしながら、全力で途方に暮れている。図書館本の貸出期限は二週間、延長手続きをして最長で四週間、しかたないので読み続けに読んだが、すこしくたびれた。これはベッドサイドに置いて、ねむる前にひとつふたつ読むのが正解。ナイト・ショートショート。そういえば、乳牛から夜に搾乳するナイトミルクは眠気を誘うとかで、その名もネムーというのがあって、ネムーリングリングという入眠ミュージックを紹介するラジオ番組をやっていたっけ、と、気になって調べたら番組のホームページが残っていて、アーティストの紹介した楽曲とコメントが一覧になっている。それを眺めていたらたのしくなって眠れない。キャンドル・ジュンが、夢のなかで恋してます、なんてコメントしたり、飯島愛小向美奈子塩谷瞬の名前をみつけると、随分遠くにきたもんだと思ってしまう。アンガールズaikoみうらじゅん米朝師匠の落語を紹介している。わたしの入眠ミュージックはなんだろうと思って音楽のリストをひらき、サニーデイ・サービスのうぐいすないてる、をボリュームを最小にしぼって布団のなかにもぐって聴く。こんな風に音楽だけを聴く時間は久しぶり。音楽がとまったら両隣の寝息の二重奏を聴きながらねむろう。