まみ めも

つむじまがりといわれます

みやげの小石

保育園まで、家から500メートルの距離で、遊歩道から大通りに出て、交差点をふたつ、信号をみっつ渡って、また遊歩道を歩いていく。この時期は紫陽花が花ざかりで、日によっては少し茶色くなったくちなしの花の甘いにおいが立ち込める。
帰り道で、いつもすれ違うトイプードルを連れたおじさんがいて、いつのころからか挨拶を交わすようになり、そのうちセイちゃんがおやつをあげるようになった。おじさんがポケットから四角い小さな犬用のおやつを出してくれて、それを手のひらにのせてやるとペロッとなめる。犬の名前はピース。セイちゃんがおじさんの名前をきいたら、おじさんは俺の名前はいいよといって答えなかった。最近になって怖々とみていたフクちゃんもピースにおやつをあげられるようになって、毎日、ふた粒ずつわけてもらっては、食べさせている。
もうひとり、いつとはなしに挨拶を交わすようになったお姉ちゃんがいて、この間、セイちゃんがお名前は?ときいたら、なつみさんと言うらしい。きのうは、信号の途中ですれ違い、フクちゃんがのんびり渡っているうちに青信号が点滅しだしたら、お姉ちゃんも一緒に戻ってくれた。それで、ありがとうとお礼を言って、信号待ちするお姉ちゃんにバイバイをしていたら、振り向きざまにフクちゃんが投げキッスをしたので、おかしかった。二歳児にしてなかなかの心得だと思う。
家に着くと庭先で育てている野いちごの赤くなったのを摘んで、家にあがって手を洗ったらテレビをつけてやり、煎餅などちょっとしたおやつと一緒に出してやる。ふた株買った野いちごだが、毎日ひとつふたつ赤い実をつけていて、すっぱいが、こどもたちはよろこんでつまんでいる。今年はブルーベリーも実がなりそうだ。かぼちゃもいくつか雌花がついた。プチトマトも少し背がのびてきた。

みやげの小石―随筆集

みやげの小石―随筆集

くちぶえサンドイッチで出ていたのを図書館で予約。読みはじめたときは体調がすぐれなかったので、自嘲気味に皮肉めいた書きぶりに少し辟易したが、だんだんに味がでてきておもしろくなる。いかすみとか、さんまのわたとかの類。
阿部昭はちょっとしたときに、人に文庫本を贈っていたらしい。

文庫は持ち運びに便利だし、手がくたびれないし、無くしてもすぐ買えるし、どこの書店にもたいていそろっているしーーいろいろ美点があるが、さらにもう一つ、安いから何冊でも同じのを買って気軽に人に贈ることができる。

これを読んだら、なんだか羨ましくなって、父の日、おとうさんに文庫本をプレゼントした。三木清の人生論ノート。阿部昭が結婚前に恋人だった奥さんに贈ったというアポリネール詩集をそのうち文庫で読んでみたい。