まみ めも

つむじまがりといわれます

おんなの領分

金曜にめずらしく妹から連絡があって、おかあさんが上京しているので明晩みんなでごはんでも、といってきた。わざわざ浦和まで出向いてくれるというので、泊まってもらうことにした。が、妹が食あたりをおこしたらしく、こどもたちにうつるものであってはよくないということでおかあさんがひとりできた。こどもたちの昼寝中に、図書館ついでに駅まで迎えにいく。パンとお惣菜をぶら下げたおかあさんに駅で落ち合い、それからスーパーマーケットにいき、いちごを3パック、りんごをふたつ、胡瓜におからになめこ、蕗の煮物と金時豆の甘煮を買って帰宅。こどもたちを起こしてお土産の水羊羹でおやつをし、大相撲をみながらおかあさんは台所にたっておからの煮物となめことわかめの味噌汁を作ってくれた。夜は宅配のお寿司にお惣菜。おからの煮物、おかあさんのごくごく薄い味付けがこよなく懐かしい。よく朝はおかあさんの買ってきたパンとフルーツ、インスタントコーヒーで朝食をすませ、こどもたちと公園で別れ、駅前のスーパーマーケットで妹にいちごやレタスを買うおかあさんにつきあってから、駅で別れた。乗り換え駅で間違えないように、改札を通ったあとの階段を教えて、見届けて、おかあさんは階段をおりる手前で最後にふりむいたけれど、ちいさいので、人波にまぎれてこちらは見えんかっただろう。

久生十蘭で図書館の蔵書検索をした中から、文春文庫のアンソロジーをえらんで予約。「初代の女」は現代日本のユーモア文学で既読。いろんな女の博覧会。久生十蘭の「モンテカルロの下着」は「黒い手帳」(「黒いモロッコ皮の表紙をつけた一冊の手帳が 薄命 (ファタール) なようすで机の上に載っている」というこの一文だけで、久生十蘭に恋をしそう)を思わせる賭けを題材にしたものだったが、黒い手帳の陰気なおとこ像に対して、こちらのおんなたちは似たようなことをやりながらあっけらかんとしたたかだった。どちらも十蘭らしい対比的な作品。
I・かわいい女
「美女」 アントン・チェーホフ
「恥」 太宰 治
モンテカルロの下着」 久生十蘭
「じねんじょ」 三浦哲郎
II・あやうい時間
「足にさわった女」 澤田撫松
「人妻」 永井荷風
「花束」 十一谷義三郎
III・悲劇の予感
「初代の女」 飯沢 匡
「さかだち」 柴田錬三郎
「待っている女」 山川方夫
「かなしき女王」 フィオナ・マクラウド
IV・変幻自在
「雨」 北原武夫
「黒髪」 大岡昇平
「嫉妬について (「話のたね」より)」 池田弥三郎
V・女か蛇か
「蛇」 ジョン・スタインベック
「二十九号の寝台」 ギイ・ド・モーパッサン
「髪結いのおとら (「凡愚列伝」より)」 長谷川如是閑
VI・かかってきなさい
「三人の肥った女」 W・サマセット・モーム
「晩菊」 林芙美子
「風変りな女 (「話のたね」より)」 池田弥三郎

みな一様に夕焼けを仰ぎ、だれしもそれが非常に美しいのに気づく。しかし、だれ一人、いったいどこに美が存するのかを知っている者もなければ、口にする者もないのだ。
「美女」チェーホフ