まみ めも

つむじまがりといわれます

残像に口紅を

産休初日、友達が休みをとってランチにつきあってくれる。京浜東北線に乗り込み、東京駅まで出て、待ち合わせの時間まで改札のなかのカフェでアイスカフェオレとパンオショコラでおそ朝にする。本棚のなかから選んだ中村真一郎福永武彦の全集がお供。このごろ仕事が切羽詰まって落ち着いて小説を読む気になれずにいたので、久しぶりに純文学めいたものを読みたくなり、「廃市」をじっくり読む。ちょうど読み終えたところに連絡があり、合流。ぷらぷらと丸ビルを歩いたあとで東京ドームの見える35階の料理屋で懐石をごのんびり馳走になり、親子のだるまをもらった。場所をうつしてアイスコーヒーを飲み、駅でパンを買って解散。よく笑った一日だった。

残像に口紅を (中公文庫)

残像に口紅を (中公文庫)

「腹立半分日記」で筒井康隆が自己言及していた作品。図書館で予約。音が失われていく世界で、音とともにその音を含んだものも失われていく。それを損なわれたことばで記していく実験的な小説。後半、音がかなり失われた段階で乳繰り合いの描写がはじまり、おやおやと思っていたらページが袋綴じになっていて、

ここまでお読みになって読む気を失われたかたは、この封を切らずに、中央公論社までお手持ちください。この書籍の代金をお返しいたします。

と書いてあった。もちろん図書館で借りた先人たちは袋綴じの魅力には抗えないようで、ちゃんと開いてあったので、ありがたく結末まで目を通すことができた。ちなみに、5カ所、使ってはいけない音を使っているところがあるらしい。