先だっておかあさんが庭先で薄グリーンのきれいな蛇をみかけて感動していたけれど、その話を夕飯どきにしていたら、おとうさんが、そういえばヘビの抜け殻がある、という。会社の敷地にシマヘビが脱皮していたとかで、あまりに見事な抜け殻につき、額装して和室に飾ってある。それを、夕飯のあとで見せてもらった。頭から尻尾までメートル級の長さのたしかに見事な代物で、目玉の穴まできちんと見えているのが、長々と和室の神棚のわきに飾られている。おとうさんは縁起がいいとよろこんでいるが、額装するのに27000円也、しかも有機体の宿命でどんどん風化して最後は無に帰するらしい。額装屋の話では蛇の抜け殻の額装はこれで4件目。
- 作者: 石井好子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1983/05
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石井好子の祖父は「政界の黒幕・フィクサー」と呼ばれたたいした人物らしいのだが、たまたまその血筋のひとと従兄弟が友人で、どこやらの湖畔にある別荘に招ばれてお邪魔したところが、スケールのでかい金持ちぶりで朝食にでたベーコンの味がいままでたべてきたベーコンとはちがう未知の代物であったという。こういうエピソードが大好物で、宿六が、カズはものすごくいいにおいがした、と話していたのと似たものを感じてよくわからない憧れが募る。未知のベーコン。カズのにおい。