まみ めも

つむじまがりといわれます

ねにもつタイプ

フクちゃんがうまれるとき、夜中に破水して病院にむかう車中では、カーラジオからミスチルが流れていた。運転していたおかあさんが、わたしをうんだときに、うぶ声をききながら、女の子だったので、「この子もいつかお産のつらさを味わうのか」とかわいそうだった、という話をした。ふみちゃんがうまれたあとで、わたしはありがたいばっかりでかわいそうにと思う余裕はなかった。退院して家路にむかう車中で、ボリュームをしぼったカーステレオから低くつぶやくように流れるのはなんやろうと耳をすましたら真言宗のお経だった。退院した日がちょうど入籍した記念日だったので、近所のケーキ屋にケーキを注文して帰ったら、夕方になってスーパーまで車をとばしてガーベラの鉢植えをふたつ買ってきてくれた。その日から7月のおわりの今日まで、家からほとんど出ない。今月はひと月のうちに2度満月のある珍しい月らしく、今夜はその2度目の満月。

ねにもつタイプ

ねにもつタイプ

コアラの鼻の材質。郵便局での決闘。ちょんまげの起源。新たなるオリンピック競技の提案。「ホッホグルグル」の謎。パン屋さんとの文通。矢吹ジョーの口から出るものの正体。「猫マッサージ屋」開業の野望。バンドエイドとの正しい闘い方―。奇想、妄想たくましく、リズミカルな名文で綴るエッセイ集。読んでも一ミクロンの役にも立たず、教養もいっさい増えないこと請け合いです。

岸本佐知子のうしろむきに加速する根暗な妄想ワールド。「つまみぐい文学食堂」のあとがきに、お話の中で美味しいものが登場したら、そのあとでずっこけてバランスをとらなければならない、とあったけれど、岸本佐知子ワールドはとことんけつまずきっぱなしで、それなのにずっこけはせずにクルリと回収される感じが不思議と心地よい。実は読む側のほうが、岸本佐知子の掌のうえで踊らされけつまずいているのかもしれん。