まみ めも

つむじまがりといわれます

となりのカフカ

きのうの昼間、雨雲ズームレーダーが地図を真っ赤に染めていた2時間あまりは本当にものすごくて、なんやモーセ十戒でもはじまんのかというような空模様だったけれど、海が割れることもなく、雨のピークを過ぎたところで仕事をあがり、ぱらつく雨と風の吹く中を帰ってきた。傘はささなかった。帰り際、おつかれさまですと声をかけたら「幸運を祈る!」と返ってきた。オリンピックや台風は、みんながおなじベクトルでいける話題なので、妙に盛り上がってしまう。オリンピックもおわって、台風もいってしまった今、足並みを揃えるスキルが試される。
夏休みに俳句の本をもらって、セイちゃんとフクちゃんは毎日のように五七五を考えている。ときどきいいのができる。
そらにはね にゅうどうぐもが せのびした(セイちゃん)
あたらしい あさがきたよと せみがなく(フクちゃん)
八百屋でひとかかえのセロリを買って、包みのセロファンにセルリーとあるのを見てから、俵万智風にセルリーを使った五七五をよみたいのだけれど、そもそもセロリは冬の季語なのだった。

となりのカフカ (光文社新書)

となりのカフカ (光文社新書)

ト本。

カフカ初級クラス・十二回講義。しめくくりは終了祝いのプラハ旅行つき。
カフカというと、イメージがきまっている。大きな目。そげた頬、悪魔のように尖った両の耳、かたくむすんだ唇。
その顔だけでも、ただならぬ雰囲気がある。何やら恐ろしげだ。そういえば、実にへんてこな小説を書いた。ある朝、目を覚ましたら虫になっていた男の話。あるいは、同じくある朝、目を覚ましたら、何も悪いことをしたおぼえがないのに逮捕されていた――。
あのカフカである。悪い夢に出てきそうだ。小説そのものが悪夢じみている。(中略)
しかし――そうではない。イメージがまちがっている。まるっきり、ちがうのだ。(第1章より)

名前は聞いたことがあり、顔写真のようなものを見たこともあって、難しい小説を書いたといったことはなんとなくイメージにある。でもカフカってどんな人?
友人、知人の伝えるところによると、フランツ・カフカは物静かで、謙虚な人だった。半官半民の役所に勤め、女性を愛するたびに誠実に悩んだ。結核に冒せれても我慢強く苦痛に耐えた。勤めから帰ると仮眠を取り、夜中にせっせとノートに小説を書いた。書き続けるために独身を選び、家庭の幸せをそっくり捨てた。
一見謙虚だが、背中合わせに野心家のカフカがいた。いずれ自分の時代が来るとかたく心に期していた男。カフカ初級者に送る「カフカの全貌」。

夏休み、なんとなくカフカな気分になって図書館で借りてきた。池内紀の案内でカフカに会える、いかした一冊。二段とばしで階段をかけあがりたくなる。いつか、プラハの町でカフカ巡りをしたい。