まみ めも

つむじまがりといわれます

ずっしり、あんこ

通勤で乗る水色の電車はいつも決まったところで乗る。乗り換え駅で降りるところにはエスカレーターしかないので混み合うのはちょっと難儀するけれど、ここで降りて改札にいく前にほんのちょっと回りこんで花屋のそばを通る。タイミングが合うとちょうどシャッターのあがるところに出くわすときがあって、花のにおいが一瞬だけたちこめる。いつも、花屋のそばを通り過ぎるときだけは意識的に鼻をスーハーしてしまう。においがグラデーションになっていて、どの花がにおうのだかわからないまま捉えられずにおっている感じがいい。
梅の花がだいぶ咲いてきて、桜の枝先にもなんとなくリズムがうまれてきた。気づけばいろんな木が芽吹いている。いよいよあったかくなりだすと少し憂鬱で、どうやら春の兆しがあるけれどまだまだ寒いという季節が一番好きらしい。

ト。

掌の重みは、おいしさの証-。「餡」にまつわる随筆集。芥川龍之介安藤鶴夫糸井重里上野千鶴子武田花平松洋子村松友視らによる全39篇を収録する。

しるこ p7-8 芥川 龍之介
甘いものゝ話(抄) p9-11 久保田 万太郎
粟ぜんざい−神田<竹むら>− p12-18 池波 正太郎
鶴屋のお菓子 p19-27 小島 政二郎
ギリシャの神 p28-30 戸板 康二
「羽二重団子」で日本酒を飲む p31-35 重金 敦之
あんころ p36-39 井上 靖
夜明け前、赤福を買いに p40-45 北尾 トロ
追分羊羹の贅沢 p46-48 村松 友視
和菓子 p49-56 上野 千鶴子
草餅 p57-63 石牟礼 道子
菓子 p64-69 幸田 文
桜餅 p70-74 吉屋 信子
和菓子のかわいらしさ p75-77 手塚 治虫
つぶれたおはぎ p78-79 青木 玉
お彼岸 p80-83 武田 花
気難しいおはぎ p84-88 筒井 ともみ
手づくりの餡の魅力 p89-91 辰巳 芳子
あんこの立場 p92-96 酒井 順子
銀行の汁粉 p97-100 山本 一力
大手饅頭 p101-103 内田 百間
再会の味 p104-107 平松 洋子
マンジュウの涙 p108-110 外山 滋比古
たいやき(抄) p111-120 安藤 鶴夫
まんじゅうとあんこ p121-126 吉本 隆明
ドラ焼き p127-128 林家 正蔵
川ぞいの町にて p129-133 増田 れい子
冬は今川焼きを売り夏は百姓 p134-137 深沢 七郎
餡ドーナツ p138-141 野中 柊
あんパン p142-144 穂村 弘
あん p145-150 竹中 郁
あんこは小宇宙だ。 p151-153 糸井 重里
「こし」か「つぶ」か p154-159 東海林 さだお
粒の神秘 p160-162 荒俣 宏
こしあんと私 p163-168 林 望
あんこと、父権の死 p169-178 宮沢 章夫
小豆 p179-183 塚本 邦雄
菓子っ気春秋 p184-194 中村 汀女
菓子の譜 p195-197 岩本 素白 

三つ食へば葉三片や桜餅 虚子
桜餅の葉をどうするか問題があって、わたしは食べてしまうので、桜餅を食べても虚子のようにはいかないのだった。長命寺の桜餅には葉が二枚ついているという話で、長命寺では葉をどうするかはお好みでどうぞと言いつつ、はずして食べることをおすすめしている。
さらにあんこにはつぶかこしか問題もあって、立場を表明している人を記しておく。わたしはつぶしのきく「つぶ」派です。雑味上等。
「つぶ」派
野中柊 小豆にしっかりと存在感を主張してほしい
東海林さだお 一目見て身元がすぐわかる
荒俣宏 (こし餡は)餡を食べた気がしない
宮沢章夫 雑味がなければ美味しいと思えない
「こし」派
林望 手間暇をかけて作られたその「手の温もり」
筒井ともみ つぶし餡より誤魔化しがきかない
穂村弘 こしあんは舌触りがなめらかなのである