まみ めも

つむじまがりといわれます

極上掌篇小説

週明けに家に戻った。帰った途端ほっとしたのか疲れたのか、トイレでげろげろと吐いてしまった。フーちゃんをおぶって買い出しを済ませ、おかずをいくつか作った。連休前から右の唇の端に居座っている口角炎は仕事のストレスによるもので実家でのんびりしているうちに治る予定だったのに、ビタミン剤や霊芝の煮出したのを飲んでもおしっこがメローイエローになっただけだった。こういうちょっとした不調がじわじわと長引いていく。養命酒の出番かもしれない。

地元で借りたト本。

現代の名手30人が、両手でそっとすくい上げた宇宙を横切る物語のきらめき。原稿用紙わずか10枚に、こまやかな物語のひだを情感ゆたかに謳いあげる、所要時間各数分、珠玉の現代文学・各駅停車の旅。
ミケーネ いしい しんじ
おねがい 石田 衣良
仔犬のお礼 伊集院 静
永遠の契り 歌野 晶午
ピクニック 大岡 玲
神様捜索隊 大崎 善生
目覚まし時計の電池 片岡 義男
立ち話 勝目 梓
夜尿 車谷 長吉
猫雨 玄侑 宗久
名前漏らし 小池 昌代
焼き鳥とクラリネット 佐伯 一麦
あり得ること 佐野 洋
それでいい 重松 清
たすけて 高橋 克彦
凍りつく 高橋 源一郎
パリの君へ 高橋 三千綱
pearl parable 嶽本 野ばら
出世の首 筒井 康隆
悪夢−或いは「閉鎖されたレストランの話」− 西村 賢太
関寺小町 橋本 治
繭の遊戯 蜂飼 耳
義足 平野 啓一郎
あたしたち、いちばん偉い幽霊捕るわよ 古川 日出男
雛 星野 智幸
樫の木の向こう側 堀江 敏幸
コイン 又吉 栄喜
彼女の重み 三田 誠広
globefish 矢作 俊彦
曇ったレンズの磨き方 吉田 篤弘

鮮やかな表紙は「旅先でビール」の鈴木成一デザイン室。こどもたちが寝たあとで田んぼから聞こえる蛙の鳴き声をBGMにして読む短いおはなしたち。ほとんどのおはなしが淡く酔っぱらだだ頭を通り過ぎていったけれど、それは、わたしが忘れたのだったか、おはなしがわたしを忘れたのだったか。どこかで再会したら懐かしくなるだろうけれどきっと思い出せない、手の届かない引き出しにしまっておこう。