まみ めも

つむじまがりといわれます

この人、カフカ?

麻婆豆腐がおいしい。先週は二回作った。玉ねぎやなすやキャベツを刻んで入れたり、肉もひき肉ではなくとりのもも肉を小さめに切って使う。味つけはいつも適当で、甜麺醤や味噌、みりんに醤油、中華のだしを目分量でやる。麻婆豆腐は失敗の起こりにくい料理であるらしい。こどもたちのお皿に取り分けたあと、大人のぶんにはチリペッパーとガラムマサラを存分にふりかけた。汗をかきながら食べる。いろんなスパイスを試したくなり、豆鼓いりのラー油を買ってきた。

この人、カフカ?:ひとりの作家の99の素顔

この人、カフカ?:ひとりの作家の99の素顔

ト。となりのカフカに続いていいタイトル。原題はIst das Kafka? 99 Fundstücke

日記や手紙、走り書きやサイン、出版広告、高校修了証、妹に宛てた初めてのポストカード、「変身」の部屋の間取り、アンケート用紙や遺言状、墓碑銘…。カフカの生の断片に光をあて、その知られざる魅力を浮かび上がらせる。
なくて七癖 Eigenheiten
 1 巡り合わせの悪い慈善家
 2 カフカ、高校卒業試験でカンニングする
 3 修了証(アビトゥーア合格証)
 4 ホテル・カフカ
 5 偉大なるイラストレータ
 6 カフカ、システムに則り体操する
 7 ムッツィへの小包
 8 カフカは嘘がつけない
 9 カフカ、ビールを飲む
 10 カフカお気に入りの歌
 11 カフカ、バルコニーから痰を吐く
 12 唯一の敵
 13 カフカの目は何色だった?
感情 Emotionen
 14 カフカがつい泣いてしまうこと
 15 カフカはエルゼ・ラスカー=シューラーが嫌いだった
 16 カフカ、腹を立てる(その1)
 17 カフカ、腹を立てる(その2)
 18 教授とサラミ
 19 カフカはお上品でない
 20 娼婦のところで
 21 女の子とたわむれる
 22 局長の娘――悪夢
 23 美しいティルカ
 24 ユーリエとデート
 25 カフカ、ある絵に思い沈む
 26 父に宛てた三通の手紙
 27 カフカは医者を信じない
 28 カフカは予防接種など効果なしと思っていた
読むこと、書くこと Lesen und Schreiben
 29 カフカの書き物机
 30 はじめての葉書
 31 カフカアメリカ=インディアン
 32 カフカヴォルテールのようになりたい
 33 カフカは詩を一編書き、自分でも気に入っていた
 34 カフカ、書評を書こうとする
 35 出版社による最初の広告
 36 ザムザ一家の住む家
 37 カフカ、書き間違える
 38 カフカ、校正刷りを読む
 39 ひとつ余分なコンマ
 40 傷害としてのカフカ朗読?
 41 書かれなかった短編小説
 42 ブロスクヴァ草稿
 43 管理事務所にて(その1)
 44 管理事務所にて(その2)
 45 こま
 46 城への最初の一歩
 47 最初の翻訳
 48 カフカヘブライ語で書く
 49 オリジナルとのつきあいかたについて
スラップスティック Slapstick
 50 殺人鬼、ヨーゼフ・K
 51 カフカ、総裁を笑いのめす
 52 聴衆は逃げ、カフカは残る
 53 裁判所でのスラップスティック
 54 両手の闘い
 55 宮殿のネズミ
 56 カフカ、ネズミを怖がる
 57 人間と豚
 58 農夫たちの会話
 59 カフカ、川に突き落とされそうになる
幻想 Illusionen
 60 カフカとブロート、もう少しで億万長者になったこと
 61 カフカ、オリンピックでの勝利を夢見る
 62 カフカ、エイプリルフールで担がれたふりをする
 63 カフカ文学賞をほぼ受けたときのこと
 64 カフカ、チップをもらえない
 65 フランツ伯父さんのひとりごと
 66 カフカ、留守番電話を発明する
 67 カフカ、サインを偽造する(その1)
 68 カフカ、サインを偽造する(その2)
 69 空想のメイド
 70 カフカゴーストライターになる
 71 すべての同居人諸君へ
 72 無産労働者集団
他の場所で Andernorts
 73 カフカアメリカに詳しくない
 74 パリでの交通事故
 75 カフカとブロート、カジノで旅費をする
 76 この人、カフカ?(その1)
 77 カフカ、地下鉄に乗る
 78 カフカ回転木馬に乗る
 79 この人、カフカ?(その2)
 80 パスポートなしで国境を越える
 81 ベルリンの分身
鏡像 Spiegelungen
 82 カフカ、読者から手紙をもらう
 83 盲目の詩人の献辞
 84 カフカ、人生相談にのる
 85 カフカ、悪魔になる
 86 ゲオルク・ランガーによるカフカの思い出
 87 カフカプラハで話題の主となる
 88 カフカ博士、問題なし
 89 帝国から最後のあいさつ
 90 友人の間のアンケート
 91 カール・クラウスカフカの手紙を受け取らず
 92 フランクとミレナ
 93 フランツ伯父さんの思い出
 94 カフカへ贈る愛の詩
最後 Ende
 95 カフカのクラスメイトで亡くなった人々
 96 カフカの遺言
 97 最後の手紙
 98 墓碑銘
 99 ミレナの追悼文

目次を読むだけでどきどきする。カフカ本を読むと、断片にこそカフカが宿っているような気がする。カフカは細部に宿る。カフカのとるにたりないエピソードをもっと知りたい。この気持ちはなんなのか。階段を二段飛ばしで駆け上がる人なんかを見つけては勝手にときめいてしまう。一段飛ばしはいるけれど、二段飛ばしはなかなかいない。それが、うちの会社に二段飛ばしの人がいて、痩せ型の長身で、ひょっとして夜な夜なとんでもないお話をしたためているのではないかと思わせてくれるあやしさも備えている。誰も気づいていないだろう、でもわたしは知っている。
カフカが死ぬとき、友人のお医者が「私はここから出て行かないよ」といったら、カフカが「いや、出て行くのはぼくだよ」と返して息を引き取った、というのは脚色が入っているらしいけれど、カフカらしいエピソードで気に入った。