セイちゃんとフクちゃんはしばらく石川へいって、木曜に帰ってきた。動物園でホワイトタイガーをみたり、映画に出かけたりしたらしい。戻ってきた日は仕事で、おかあさんが家までふたりを連れてきて、ひと晩泊まって帰っていった。お土産に家で取れたトマトと丸八製茶のお茶を持ってきてくれた。川上未映子が、おかあさんに申し訳のない気持ちがずっとあるということをどこかで書いていたけれど、おかあさんに会うとそういう気持ちがしつつそれでも甘えてしまう。金曜の朝は一番に起きて弁当を作った。ウインナーとコーンをいれたケチャップライスに薄焼きの卵をのせたオムライス。セイちゃんはカレーライスもオムライスも納豆ごはんも徹底的にまぜてから食べる。片腕しか使えないけれどやっぱりオムライスをとことんまぜてから食べたらしい。
- 作者: 春見朔子
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2017/02/03
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
薬剤師の千景とスナックに勤めるまゆ子。高校の同級生である2人は10年ぶりに再会し、一緒に暮らし始める。わかりあえないながらも心寄せ合う2人が、過去に抱える秘密とは? 『すばる』掲載を単行本化。
結局人と人とはわかりあえないのだけれど、それでもふっとかすめるように共鳴する瞬間があったりして、何度もがっかりしながらやり直して、なんとか続いていくのは、ちょっとした願いのような気持ち。