そうめんがおいしい。茄子をくたくたに煮て、冷やしておき、蒸し鶏を作ってそれも冷やしておき、薬味はねぎと大葉を刻んで、チューブのしょうがをしぼり入れてつるつる食べる。高山なおみがチューブのしょうがは墨汁のにおいがするといっていたけれど、わたしにはそれを感じる才能がない。才能があっても墨汁のにおいは好きなので問題ないような気がする。墨汁のにおいのめんつゆってどんなだろうな。思い出すのはこどものころ、お寺さんで習字をした座敷、誰かがひっくり返した墨汁のしみとにおいが畳に残っていて、みんなで正信偈を唱えたあの夏の空気。結局かえるところはあこなんやという思い。
- 作者: 川村湊
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2002/11/05
- メディア: 単行本
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昭和16年、南洋庁国語教科書編修書記として、現地の日本語教科書編纂のために南洋群島へ旅に出た中島敦。翌年帰国するまでの、子どもや妻に宛てた、家族愛あふれる全自筆書簡81点を紹介する。
中島敦の筆跡のしなやかさにうっとり。日ペンの美子ちゃんではないけれど、この筆跡でラブレターもらったらかなりぐっときてしまうことを否めない。さらにこどもをノチヤボンとか愛称で呼ぶところもくすぐってくれる。トンちゃん先生のおとうちやんぶりはかなりいけている。そのくせあんなに透徹した短編が書けるだなんて。ちょっともう一度中島敦を読み直さなきゃいけないな。