まみ めも

つむじまがりといわれます

KAWADE道の手帖 中島敦 生誕100年、永遠に越境する文学

通勤の途中にあるちょっと時代感のある自動販売機に、山ぶどうサイダーという缶入りのジュースが売っていて、100円、ずっと気になっていた。ついに機が熟した、いまだ、というタイミングがあり、百円玉を握りしめてにじり寄ったら山ぶどうサイダーだけに売切の赤いランプがともっている。ランプもくすんでよく見えない。しゃあない出直し、と翌日にかけつけたら、山ぶどうサイダーは泡と消え、オレンジサイダーというたいしてそそらない商品にいれかわっていた。自分で思っていたより意気消沈してしまって、その自販機の前を通るたびに山ぶどうサイダーがないことを確かめてしまう。あのくすんだ自販機から転がり出る山ぶどうサイダーを飲みたかった。

中島敦 (KAWADE道の手帖)

中島敦 (KAWADE道の手帖)

ト。

帝国に抗する力を表現した作家、中島敦。「山月記」「章魚木の下で」などのアンソロジーをはじめ、作家や作品を知る著名人のインタビュー・エッセイ・論考等を収録。
帝国に抗する力を表現した作家 川村 湊
“異”なるものを求めて 高橋 英夫
すべては中島敦の中にあった 渡邊 一民
中島敦南方行の背景 岡谷 公二
世界の記憶−中島敦論− 安藤 礼二
「天」をもった文学者 勝又 浩
生に対する自意識の功罪について 青木 純一
哲学的概念の鮮やかな擬人化 前田 英樹
中島敦はいつでも再生する 松枝 到
トロピカル・ダンディ?−動物・近親性交・聲・文字・自死・食人儀式− 松本 潤一郎
中島敦氏のこと 渡邊 一夫
格調高い古典的な文体で奏でられる近代人の内面の音楽 倉橋 由美子
ケチくさくない作品 開高 健
中島敦のテーマ 池澤 夏樹
作家の狼疾−中島敦『わが西遊記』を読む− 武田 泰淳
中島敦、その世界の見取図 福永 武彦
中島敦-人と作品 吉田 健一
円環の渇き(抄) 澁澤 龍彦
中島敦・文学という恩寵−『光と風と夢と』と『李陵』− 日野 啓三
「問い」の変位、「なぜ」から「どのように」−『文字禍』を中心に− 小沢 秋広
中島敦における歌のわかれ 矢川 澄子
中島敦のうたでない歌 池内 紀
山月記 中島 敦
文字禍 中島 敦
牛人 中島 敦
罪・苦痛・希望・及び眞實の道についての考察 フランツ・カフカ/著 中島 敦/訳
章魚木の下で 中島 敦
和歌でない歌 中島 敦
小笠原紀行 中島 敦

池澤夏樹福永武彦中島敦について書いていて、珍しいかたちでの親子共演に反応してしまう。
中島敦カフカを読んでいたこと
「ぶたぶたくん」の土方久功との縁故
「ある時はフィリップのごと小さき町に小ひさき人々を愛せむと思ふ」
硬軟とりあわせたかなり稀有な才能だったのだなとおもう。中島敦より五年も長生きしてしまった。永遠に越境する中島敦にどこまでもついていきたい。