まみ めも

つむじまがりといわれます

なくしてしまった魔法の時間

夜更けはくるったような雨と風で、あちこちでなにかが飛び、倒れる気配がして浅い眠りだった。朝早く家を出ると往来にはいろんなものが転がって、金木犀の小花柄が地面に濃淡をつくっていたり、あおいままの銀杏の葉が散り敷いている。駅についてみたら電車は30分以上しないと来ないのだという。自動販売機でオレンジジュースを買い、飲み干し、プラットフォームで本を読む。気づくと後ろに列が伸びてプラットフォームは人で埋まっている。きょうは台風一過で暑くなる予報だったので、そうめんと食べようと思って、むき枝豆をゼラチン入りの出汁でひたしたものを冷蔵庫に入れてきた。

なくしてしまった魔法の時間 (安房直子コレクション)

なくしてしまった魔法の時間 (安房直子コレクション)

ト。

「さんしょっ子」「きつねの窓」「空色のゆりいす」「鳥」「夕日の国」「だれも知らない時間」「雪窓」「てまり」「赤いばらの橋」など初期の短編集から11編と、作品理解の助けになる単行本未収録のエッセイを巻末に収録。 

山でまよった男が、子ぎつねのそめもの屋に入ると、なぜか子ぎつねは指をそめることをすすめます。不思議に思った男に、子ぎつねは自分のそめた指でひし形の窓をつくってみせてくれました。その窓をのぞくと、母ぎつねがじっとすわっているのが見えます。まるで一枚の絵がぴたりとはめこまれたような感じに見えるのです。『きつねの窓』など短いお話が11編はいっています。 
さんしょっ子 p9-32
きつねの窓 p33-48
空色のゆりいす p49-72
鳥 p73-98
夕日の国 p99-128
だれも知らない時間 p129-166
雪窓 p167-196
てまり p197-222
赤いばらの橋 p223-244
小さいやさしい右手 p245-270
北風のわすれたハンカチ p271-302
エッセイ p303-336

ひんやりとせつなくて涙がでるほどうつくしいお話たち。装填はクラフト・エヴィング商會で、宝物にしたくなっちゃった。なんとかして全七巻をそろえたい。