庭、モッコウ薔薇とテッセンが咲いている。白山、ことしは雪がしろく残ったまま。水の張ったとなりの田んぼに木の枝を突っ込んで遊んでいたこどもたちをのぞき込むと、うねうねと泳ぐひるを釣っていた。ひるがなんなのか知らないでいる。血を吸われるぞと脅しておく。
できるだけおなかにgのかからないように、台所の手伝いも椅子にかけたままでやる。椅子にかけて包丁をにぎるとジョゼになった気分。ドサっと車椅子から降りたジョゼの淡々としたしなやかさを思う。恒夫はほんとうにあかんたれやったなあ、そこで泣くなよ。ああでもここにもそこにもだめなやつばっかり。高校生のとき、友達が購買部におにぎりを注文するとき、ツナマヨ以外と頼んでいたのをふと思い出す。だめなの以外でお願いします。注文リストからのぞかれるわたくし。
ブ。108円。
間違いない。とうとう出会うことができた。運命の人だ。黙々と働く昼も、ひとりで菓子パンをかじる夜も、考えるのは恋のこと。あのときああ言っていたら…今度はこうしよう…延々とシミュレートし続けた果てに、「私の天使」は現れるのか。
「ときめき」延長作戦
いちゃいちゃ界
苺狩り
理想の男性像
「似ている」事件
性的合意点
次の恋人
好意の数値化
一次会の後で
料金所の女神〔ほか〕
穂村弘のときめきの才能がスパークするエッセイ。そうか、このだめぶりも全て計算の上。さすがもと総務課長。運命がごろごろころがっている、最後まで信じられた人が勝者。