まみ めも

つむじまがりといわれます

さぶ

椿だか枇杷だか、こんもりとした木の中にめじろが何羽もいる気配にのぞきこんだら、すべてのめじろがなにげなくこちらを向いて一瞬間にバチッとめじろたちと自分の目が合う夢を見た。 めじろの視線に試されるように、あ、とその場に棒立ちになった。抱いている和が子の双眸にうつる木漏れ日がうつくしくて、カメラで撮ろうとすると、瞳にうつるのはスマホと自分の影で、めじろといい我が子といい、夢であれ現実であれ瞳や鏡にうつることがいたたまれない。花粉症のせいか吹き出物と口角炎がひどく、うっかり笑うたびに傷口がピッとひらいて血が滲む。

きょうはうぐいすの声をこの春はじめて聞いた。まだうまく鳴けないのか、ほとけ、ほとけ、と聞こえた。

さぶ (講談社文庫)

さぶ (講談社文庫)

 

ト。

江戸下町の表具店で働くさぶと栄二は深い友情で結ばれていた。ある日、盗みの罪を着せられた栄二は怒りのあまり自暴自棄になり、人足寄場に流れ着く。人間すべてに不信感を持つ栄二を、さぶは忍耐強く励まし、支える…。 

アタックZEROのCM「入会希望者」編で杉野遥亮がハイタッチに目をつむってしまう姿があまりにまぶしくて、NHKでやっていたスーパープレミアム『山本周五郎ドラマ さぶ』を見たら、がぜん文字で読みたくなってしまい図書館で予約。さぶの文庫版はいくつか出ていて、題字のさぶは新潮は縦書き、角川と講談社は左上から右下に傾斜がついている。ドラマをみているときは、花の匂いはなんとなく梔子のような気がしていたけれど、本の中では木犀のにおいだった。解説の奥野政元「彼がゆるし得たのは、彼自身がさぶにゆるされていたからである」。