まみ めも

つむじまがりといわれます

ぶらんこ乗り

油断していたら夏をすっ飛ばして冬がきたのかと思うくらい冷える。葉つきの玉ねぎをたくさんもらったので、午前中かけてじっくり炒めて、水を足して塩こしょう、チーズを沈めたお碗に注いで、オニオンスープにした。あつあつで甘くておいしい。けれども、本当はもう少し炒めるべきだったのだろうな。せっかちで、料理の勘どころをいつも待てないで切り上げてしまう。それでも、鍋にいっぱいだった玉ねぎがくたくたになり、見る影もなくなったのをこどもたちに見せると、へえーと感心していた。ごめん、本当はもっと茶色いよ、と心の中だけで告げる。

げんちゃんが、おちゃーちゃーん、と呼ぶ。だれを呼ぶのかわからない。家族みんなではーいと返事をして既成事実をつくろうとしている。

ぶらんこ乗り (新潮文庫)

ぶらんこ乗り (新潮文庫)

 

本棚から。

ぶらんこが上手で、うまく指を鳴らす男の子。声が出せず、動物とは話のできる偏屈もの。作り話の得意な悪ふざけの天才。もうここにはいない私の弟。絶望の果てのピュアな世界を描き出した物語。

大学の生協で、新潮文庫の新刊で平置きされていた表紙がかわいくて、手に取ったんだった。2004年の出版なので、その頃だと思う。あのころ、バイト代は酒のカクヤスで買うグリーンラベルと本の支払いに消えていた。いまは、グリーンラベルから本麒麟になって、あいみょん多部未華子ではなく、江口洋介タモリと一緒にくくられる年代なんだなと妙に納得する。いしいしんじのお話は、何度読んでも鮮やかで、喪失がある。

休館していた図書館が、予約していた本だけは貸してくれるというので、指定された時間に受け取りにいった。アルコールを噴霧して、矢印で示された導線に沿って歩き、カードを置いてピッとやってもらい、ビニールの垂れ下がった向こうから本を受け取り、またアルコールを噴霧してから外に出た。出口のドアはトマソン物件かと思うくらい細長い。やれやれ。