明日はげんちゃんの一歳のバースデー。今夜は、ひとりで起き出して冷蔵庫のトマトを丸かじりして白ワインを一杯飲み、お風呂に浸かって本を読んでいたら、
かなしみのフルコースです前菜はへその緒からのはるかな自由 木下龍也
という歌に出会った。かなしみのフルコースを四つもうんでしまった。一年前の日記を読み返して、あの日のことを少し思い出す。げんちゃんが生まれたときの記念樹にもらって去年植えたブルーベリーは春になって花が咲き、細い枝の先に小さな丸い実が育っている。一粒めはげんちゃんにあげようねとみんなで話しているけれど、いちご以外のものにはあまり興味のないげんちゃん、果たして食べるだろうか。
本当なら明日から仕事だったのが、のびのびになっている。こどもの一歳の誕生日に仕事をしないのは、はじめてなので、なんだかこのままずっとこうしていてしまいそうな宙ぶらりんな変な気分がする。
本棚から。
お盆には迎え火を燃やし、秋は鈴虫の音に耳を傾ける。正月の賑わい。そして春の旅行の計画。四季の暦を家族とともに味わうこの、悠々たる人生。移ろい行く暖かな情景を、日録風に綴る長編。
本棚に庄野潤三があってよかった。何度でも読めるし、シリーズをめちゃくちゃな順序で読みながら、いつのまにか幻のお隣さんのような気持ちになっている。最後の日付はちょうど二十年前の二千年の五月十三日。メジロが庭の水盤にきて飛び立ったことを夫婦でよろこんで終わっている。