げんちゃんの誕生日は、黒鯛が一尾500円だったのを買ってあったので、鱗をとり、内臓をむしりとり、鰭で指に傷をつくりながら、なんとなく食べられる感じになったので、丸のままプチトマトとにんにくでオーブン焼きにした。本人はむしった身をすこしだけ食べた。「お」「め」「で」「と」「う」のろうそくを立てて、チョコレートで「1」「げん三」と書いたスイートポテトでお祝い。みんなでハッピーバースデーを歌う。本人はなんのことやらわからないできょとんとしていた。顔をそむけてなかなか食べようとしなかったけれど、口にしてみたら「御意」であったらしく、すこし食べてくれた。せいちゃん、ふくちゃん、おふみから、フィギュアやぬいぐるみをもらっていた。おめでとう。宴のあとで台所のあちこちから飛び散った鱗が出てくる。
紫陽花がいつのまにか鮮やかになっている。遊歩道の枇杷が、すこしずつオレンジに染まってきた。おとうさんの骨のスープを、おかあさんとふたりで飲む夢を見た。
プ。
保険会社の営業マン、ネフは、ある日、自動車保険の更新に訪れた先で、夫に不満を持つ美しい夫人フィリスと出会う。ネフはフィリスと不倫の関係に陥り、生命保険金を手に入れようと殺人計画を企てる…。名匠ビリー・ワイルダー監督が、ジェームズ・Ｍ・ケインの小説を映画化。ハードボイルド作家レイモンド・チャンドラーと共同で脚色、バーバラ・スタンウィックの官能的な演技が絶賛され、フィルム・ノワールの古典となった傑作。
よくできた映画。原題は"Double Indemnity"で1944年。
