雨が続く。梅雨どきは全身これデリケートゾーンとなり、夜中に目が覚めるとむずむずして寝つけない。うとうとしたところでげんちゃんが泣き出す。
紫陽花や枇杷に気をとられていたら、いつのまにか庭に百日紅の花が落ちている。百日紅、毎年咲くタイミングを見逃してしまう。百日紅だけが鮮やかになると盛夏だなと思う。ブルーベリーが少し色づいてきた。
七月になって、せいちゃんとふくちゃんに味噌汁の作り方を教えた。今朝はふくちゃんが玉ねぎと豆腐で作った。土井善晴が「みそ汁なんて、濃くても薄くても、温かくても冷めてても、みんなおいしい」「みそ汁は、どんな具材を入れてもおいしくなる」というので、そらそうだと思って、好きなように作らせている。おいしいおいしいと啜る。料理をすることは既に愛している。食べることは既に愛されている。
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ト。
名前も記憶もお金も持たない某は、丹羽ハルカ(16歳)に擬態することに決めた。変遷し続ける<誰でもない者>はついに仲間に出会う。愛と未来をめぐる長編。『小説幻冬』連載に加筆・修正。
「100万回生きた猫」を思った。生きないと死ねない。愛すること、犠牲を払うこと。川上弘美の「あわい」の話。
マリが山田に用意する朝ごはんがなんだかいい。
起きだして、気が向くと、山田のためにパンをトーストする。目玉焼きもつくる。レタスをちぎって、ドレッシングをかける。バナナも、食卓にのせてみる。インスタントコーヒーをお湯で溶く。
そうだった、料理をすることは既に愛しているんだった。