仕事復帰まで二週間、梅雨空とあいまってなんとなく憂鬱な気持ちでモーニングを味わう日々。ロイヤルホストのモーニングはサラダモーニングのサラダをボイルエッグにしてもらうパターンに落ち着いてきた。ゆで卵がつるんと剥けるのが気持ちいい。ドリンクバーでホットココアとアイスカフェオレを入れて、ココアで甘く熱くなった舌をアイスカフェオレの苦さと冷たさで流す。アイスカフェオレはコーヒーとミルクのグラデーションになっているのを混ぜないでそのままにしておく。そのうち氷がとけてきて、グラデーションの色がさらに変わり、グラスの下に結露の水たまりができる。結露を指先でいじりながら本を読む。
先週、例の闇市風情の八百屋で赤しそが二束で百円の廉売になっていたので思わず買ってしまう。大きな鍋に湯を沸かし、沸騰したところに二回に分けて洗った葉を入れて煮出し、砂糖と酢を加えて、コーヒーフィルターを通す。氷をたっぷりいれたグラスにジュースを三分の一いれて炭酸水で割る。鮮やかな色がのどもとをすうっと通っていくのを想像する。それでも肌はかゆいし雨だし憂鬱も残るしするのだけれど、少しだけ気分が晴れる。
金木書店で110円。和田さんのイラストがうれしい。1984年。
Ⅰ 人生はむづかしい
男の運勢
小説家のサービスの話から結婚の回数の話になりました
写真と味
アイスクリーム百杯
雨の男は定九郎
若旦那の修行
岡山に西国一の鮨やあり
文学的な庭
彼の釣魚大全
野坂昭如は確信犯なりや
菊池武一
丸やギ左衛門のこと
夢判断
サッカーは血を荒す
アメリカ的美徳
Ⅱ 探偵小説の楽しみ
フィリップ・マーロウといふ男
角川映画とチャンドラーの奇妙な関係
ケインとカミュと女について
Ⅲ 日本語それとも文章
最後の授業
勅語づくし
当節言葉づかひ
娘たち
電話の日本語
文体を夢みる
名文を読め
ちょつと気取つて書け
Ⅳ 文学もむづかしい
しどろもどろな文学辞典
香具山から最上川へ
花
橋姫
『細雪』について
退屈を教へよう
夷齋おとしばなし
家の歴史
西の国の伊達男たち
なぜ書くのか
夜明けのおやすみ
解題・小田切進
丸谷才一が徹夜で仕事をしていたころの文章をまとめたもの。
曰く、
そのころわたしは、硬軟さまざまの文章を夜どほしかかつて書きつづり、明け方あるいは早朝に書きあげると、倒れるやうに眠つたものだつた。「おやすみ」などとつぶやくゆとりはとてもなかつたが、しかしもしわたしが、なかば寝言のやうにしてさう言つたとすれば、それはいま書きあげたばかりの文章をやがて読んでくれる読者たちへの挨拶だつたらうと思ふ。
そんなわけで、27年後に丸谷さんも和田さんもいない令和の世界でおやすみの挨拶を受け取った。丸谷才一の文章は朗々と小気味よく、和田さんのブルーは鮮やかだ。