まみ めも

つむじまがりといわれます

春にして君を離れ

月曜がふくちゃんの誕生日だった。九歳。朝、いつもよりずいぶん早く起きてきて、おじいちゃんおばあちゃんから届いたバースデーカードとプレゼントの包みをあけて、二度寝していた。二度寝のある誕生日がうらやましい。

仕事のあとでお迎えをすませて家に戻ったら、庭先に出てきて、冬に学校でもらった種から育てた大根をバースデー記念にいよいよ抜こうという。ふくちゃんに、ふみがしがみつき、その後ろをせいちゃんが引っ張って、背後でベビーカーのげんちゃんが控えている。よいしょと抜けた大根は葉っぱばかり立派でひょろひょろと長細いのだった。大きなかぶならぬ細い大根。次の朝の味噌汁の具になった。

ト。

優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。が、娘の病気見舞いを終えてバクダードからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱きはじめる……女の愛の迷いを冷たく見すえ、繊細かつ流麗に描いたロマンチック・サスペンス。

三月の図書館では文庫というざっくりとしたテーマで棚が作られていた。はじめて読むアガサ・クリスティー。いつ人が死ぬのかとそわそわしたけれど、当初は別名義で書かれたというだけあって、不穏な空気をまといながら、起こらようで起こらない、起こらないようで起こるできごとを描いている。原題はAbsent in the Spring。