まみ めも

つむじまがりといわれます

縁もゆかりもあったのだ

しばらく駅のホームでのりにのっている女の人を見かけなかった。いつもの時間にいつもの駅のいつもの階段を降りていくと、そこだけ躍動感あふれる足もとから存在を確認し彼女の姿が見えることをたのしみにしていた。ときにはハンドタオルを振り回し、スマートフォンの動画を掲げて、駅員に注意されてもやめなかったというのにどうしたことだろうと思っていたけれど、今朝、久しぶりに姿を見かけてほっとする。心なしかいつもより元気がない気がする。みんなみんな息災でいておくれ。

ト。

「俺はたった今、刑務所から出てきたんだ」。私たちは固まった。刑務所と監獄博物館のある街特有の冗談だろうか。場所と記憶をめぐる、笑いと涙の紀行エッセイ。WEBマガジン『キノノキ』連載に書き下ろしを加えて書籍化。

時空が歪んでいるかのように滑稽と悲哀に彩られたことばかりが綴られている。語る本人も歪みながら、ことばだけがまっとうだ。