休園が長引き在宅勤務になった。ちょうど小学生が弁当持参の日だったので、お弁当箱を出して、おかずを用意して、ふーたんに詰めてもらう。とりの照り焼き、玉子焼き、ブロッコリー、プチトマト、栗かのこ。自分で用意したお弁当がよほど楽しみで、九時に、おべんとうまだ?と言い出した。ふーたんのぶんと、げんちゃんのぶんと、ふたつ。げんちゃん、うれしくて何度も蓋を開けたり閉めたりして、我慢できずに昼前におにぎりを食べてしまう。午後はぐずるげんちゃんを膝にのせ、おかあさんといっしょを見せながら調べものをするけれど、おまめ戦隊ビビンビーンがかかると歌わずにいられない。
古本いちで110円。手に入れたのは筑摩書房の単行本。
嵐の夜、浜で火を焚き、近づく船を坐礁させ、その積荷を奪い取る…。僻地の貧しい漁村に伝わる、サバイバルのための異様な風習“お船様”が招いた、悪夢のような災厄を描く、異色の長編小説。
吉村昭には思い出があって、大学生の夏休みにいとこと二人でタイに旅行にいくことになった空港の本屋で、旅行のあいだに読む本をと文庫本で破獄を買ったのだった。選んだ理由は分厚さだった。悪夢のようなびっちりとした長編にぐいぐい引き込まれ、蒸し暑いタイで夢中になって読んだのを思い出す。破船もなかなかの悪夢だった。