まみ めも

つむじまがりといわれます

仮面の告白

 

吹き降りの雨が続いた次の朝、庭に百日紅の鮮やかなピンク色が落ちていた。百日紅が咲く現場を押さえたいと毎年思うのに、今年も逃してしまった。統計史上もっとも短いの梅雨だったはずなのに、梅雨前線が復活して戻り梅雨なんて言い出したり、梅雨の思わせぶりに振り回されている。雨の帰り道で、水たまりを見つけたげんちゃんが、振り向いて、いい?と聞いてくる。いいよ、と答えると、水たまりにとびこんで、ばしゃばしゃ好きなだけ水をはねとばす。靴や長靴の中、ズボンまでぐしょ濡れにして、ぬれちゃった、と言いながら本人はとても満足げにしている。もったいなくてカメラを向けて動画を撮った。

エフ本。

「私は無益で精巧な一個の逆説だ。この小説はその生理学的証明である」と作者・三島由紀夫は言っている。女性に対して不能であることを発見した青年は、幼年時代からの自分の姿を丹念に追求し、“否定に呪われたナルシシズム"を読者の前にさらけだす。三島由紀夫の文学的出発をなすばかりでなく、その後の生涯と、作家活動のすべてを予見し包含した、戦後日本文学の代表的名作。

二十年ぶりくらいに読み返す。内容はまったく覚えていないけれど、一度めの梅雨明けの猛暑で、うってつけの文章に出会う。

初夏の一日、それは夏の仕立見本のような一日であり、いわばまた、夏の舞台稽古のような一日だった。本当の夏が来るときに万遺漏ないように、夏の先駆が一日だけ、人々の衣装箪笥を調べに来るのだった。その検査がとおったしるしに、人々はその日だけ夏のシャツを着て出るのである。

夏のシャツはやっぱりリネンが好きだな。