まみ めも

つむじまがりといわれます

夏物語

先週の金曜日、都内で用を片付けてから、ぷらぷらと銀座まで歩き、地下の静かな店で久しぶりの友だちと乾杯をした。何年ぶりかに会うけれど、いつ会っても昨日わかれたような親しさがあり、しかし離れがたく、終電の間際までしこたま飲んだ。次の日は三時まで使いものにならず、やっとそうめんをふた口すすって、そのあとは迎え酒でまた眠くなり、十時間ぶっ続けでねむった。ほっとしたのだと思う。

ト。

小説家を目指し上京した夏子は、自分の子どもに会いたいと思い、パートナーなしの出産を目指す。そんな中、精子提供で生まれ、父の顔を知らない潤が現れ…。生命の意味をめぐる真摯な問いを切ない詩情と泣き笑いの筆致で描く。

本を開いたのは夏の終わりで、夏子が緑子と巻子と待ちあわせしていたその日が何日か前で、まさしく自分も同じ日に出張で東京駅に戻っていて、針の穴を通るような偶然が本をぐっと引き寄せる。なんでこんなに見に覚えのあるせつなさなのだろう。