梅雨いりというものが曖昧になってしまった。まだクーラーはいれないで、窓を開け放す。ときどき風がふくといい心地がする。エレベーターでいっしょになった会社の人が、誕生日が六月のなかばで、梅雨入りしないまま誕生日を迎えるのはめずらしいと言っていた。日当たりのよいところのあじさいはふちがセピアになっている。げんちゃんが、あじさいの花をおぼえて、にじみたい、と教えてくれた。
古本いちで古い単行本を購入。
働き盛りの弟を突然襲った癌にたじろぐ「私」。手術後1年以上の延命例が皆無なことを知らされた「私」は、どんなことがあっても弟に隠し通すことを決意する。ゆるぎない眼でその死を見つめ、深い鎮魂に至る感動の長編小説。
しんどい。知らせずに見送ることも、知らずにいくことも。吉村昭と友だちにはなれないと思う。