セイちゃんは、毎朝プラスチックの衣装ケースを覗きこんで、好きな服をひっぱりだして着るようになった。こっちはなんにも言わずに好きなようにさせて眺めているが、ここのところは西松やのコーディネートがお気に入りで、ライオンだか熊だかしれないファンシーな動物と乗り物がプリントされたうえに、ブランド名なのか、フランス語らしき外国語の羅列が一緒に貼り付けられている。きのうなんかは上下がおなじシリーズで、緑のシャツに緑のハーフパンツを合わせて部屋に飛びだしてきて、そのださい出で立ちがたまらなかったのだが、早々にお漏らしをして、あっけなく全身緑はおしまいになってしまった。靴下はぎゅうっとひっぱりあげたいらしく、ハーフパンツに柄の靴下をのばして、その妙なアンバランスがわたしの気持ちを危うくする。おしゃれに育ちませんようにと思ってしまう。
- 作者: 種村季弘
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/08/26
- メディア: 単行本
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雨が降っている。外へ出るのが億劫だ。車もない。あっても運転できない。こんなときにはソファに寝ころがって、行きたい町に本の上でつきあわしてもらうのが分相応というものだ。
タイトルに惹かれて手にとった本を、あちこちで読みふける。通勤の電車、昼休みのデスク、夜になってこどもがねむり、明日の夕飯の下ごしらえを済まして、やっとソファで散歩。雨でも晴れでもどんだけ億劫だろうがこどもを保育園にやって仕事にいくが、仕事とスーパーと家の三点以外にはどこにもいけないので、ページの上であっちに行ったりこっちに行ったりさせてもらった。