まみ めも

つむじまがりといわれます

2010-01-01から1年間の記事一覧

和泉式部物語

従姉妹が古民家を買った、その元の家主は在所の村長であったとかで、家の中から文学全集がどっさり出てきたらしい。日本文学全集、海外文学全集、さらに古典文学全集。それらをそっくり譲ってもらったのを、一年近く一隅に積んであったのだが、やっと本棚に…

動物たちの物語(ちくま文学の森)

猫(三好達治)/銀のやんま(北原白秋)/春(吉野せい)/蝶(正岡子規)/こおろぎ(鏑木清方)/蝗の大旅行(佐藤春夫)/虫のいろいろ(尾崎一雄)/冬の蝿(梶井基次郎)/悲しい山椒ノ魚(野尻抱影)/プラテーロとぼく 抄(ヒメネス)/リス(コレッ…

幸福な死

BOOKOFFに出掛けたら、まっすぐ105円の単行本コーナーに行く。最寄りのBOOKOFFでは105円の単行本コーナーは、天井まである書架ふたつを埋めている。背表紙を隅から隅まで眺める。隅から隅まで眺めたあとで、もう一度ふりだしに戻り、隅…

とっておきの話(ちくま文学の森)

ミラボー橋(アポリネール)/立礼(豊島与志雄)/名人伝(中島敦)/幻談(幸田露伴)/Kの昇天(梶井基次郎)/月の距離(カルヴィーノ)/山彦(マーク・トウェイン)/アラビア人占星術師のはなし(W.アーヴィング)/山ン本五郎左衛門只今退散仕る…

機械のある世界(ちくま文学の森)

引力の事(福沢諭吉)/私の懐中時計(マーク・トウェイン)/時計のネジ(椎名麟三)/メカに弱い男(サーバー)/自転車日記(夏目漱石)/瞑想の機械(ボンテンペルリ)/怪夢抄(夢野久作)/シグナルとシグナレス(宮沢賢治)/ナイチンゲール(アンデ…

北の国から

アンヴィル!と同時に蔦やで借り出してきたのは、北の国からのテレビドラマシリーズだったわけで、わたしはまともにこのドラマを見たことがなかったのだけれども、登場人物がおよそリアルに愚かで脆く不器用であり、ときにしんから苛々しながら全二十四話を…

1Q84 BOOK2

二冊目にして愈々苛々が沸々と。例えば、主人公の青豆が胸が大きかったらいいのにというようなことをこれまで七万二千回考えて、今ので七万二千一回目だというようなくだりで、よせばいいのに、七万二千回がどれほどのものかということに思いを巡らしてしま…

僥倖

ところで、昨日は浦和のユザワヤへ行った。たどり着いたユザワヤは、入り口が封鎖、ユザワヤは移転しますと張り紙があり、落ち葉やチラシが風に舞い、いかにも祭りのあとの雰囲気を漂わせており、しばし張り紙の前で呆然としたけれども、気を取り直して本屋…

アンヴィル!夢を諦めきれない男たち

カナダのメタルバンドアンヴィルのドキュメンタリー。 カナダのトロントで結成され、1982年にアルバム『メタル・オン・メタル』をリリース、メタリカ、スレイヤー、アンスラックスといった現在活躍する人気バンドに大きな影響を与えたバンド、アンヴィル。し…

1Q84 BOOK1

ハルキムラカミはこれまでふたつ読んだことがあって、世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド、海辺のカフカ。たしか、世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランドと前後して小川洋子を、それも初めて、読んだのだったが、それが、わたしにとって…

久生十蘭ジュラネスク

ちくま文学の森で読んだ久生十蘭の二編にいちいちハートをぶち抜かれたもので、短編集を買った。「小説というものが、無から有を生ぜしめる一種の手品だとすれば、まさに久生十蘭の短篇こそ、それだという気がする」というのは澁澤龍彦のことばだそうだけれ…

贋作吾輩は猫である

内田百間。 八月の終わりに鎌倉から浦和に帰る。鎌倉での生活は、なんというのか、気の利かないわたしがなんとか気を利かそうとするものだから、無理があったといわざるを得ない。ないものをあるように振る舞う、太宰治の女生徒ではロココ式といったような気…

乙女の密告

赤染晶子。 義父は、もと大学で教鞭を取っておられた方で、世の中の人はみんな自分の生徒だと思っているようなきらいがある。はじめて義父に会ったのはもう二年も前、鎌倉の喫茶店ではじめて義母に会って挨拶をし、結婚しようかと思うという話をしたのだった…

もうひとつの話(ちくま文学の森別巻)

女(ハイネ)/島の果て(島尾敏雄)/かもじの美術家(レスコフ)/平手造酒(中山義秀)/極楽急行(海音寺潮五郎)/空飛ぶ大納言(渋沢龍彦)/鷹(石川淳)/赤い花(ガルシン)/生涯の垣根(室生犀星)/ボロ家の春秋(梅崎春生)/シシフシュ(ボル…

賭けと人生(ちくま文学の森)

全生涯(リンゲルナッツ)/賭博者(モルナール)/ナイフ(カターエフ)/その名も高きキャラヴェラス郡の跳び蛙(マーク・トウェイン)/富久(桂文楽)/紋三郎の秀(子母沢寛)/かけ(チェーホフ)/混成賭博クラブでのめぐり会い(アポリネール)/ア…

湖畔

久生十蘭という人を、これまで知らなかったのを、「思いがけない話」に収録されてあった「湖畔」があんまり面白いので、一挙に好きになった。「湖畔」は、尊大な男のねじれきったラブストーリーと言ったらいいのだろうか、男から息子への手紙という形式でつ…

思いがけない話(ちくま文学の森)

夜までは(室生犀星)/改心(O.ヘンリー)/くびかざり(モーパッサン)/嫉妬(F.ブウテ)/外套(ゴーゴリ)/煙草の害について(チェーホフ)/バケツと綱(T.F.ポイス)/エスコリエ夫人の異常な冒険(P.ルイス)/蛇含草(桂三木助)/あけ…

悪いやつの物語(ちくま文学の森)

芸語(山村暮鳥)/昼日中/老賊譚(森銑三)/鼠小僧次郎吉(芥川龍之介)/女賊お君(長谷川伸)/金庫破りと放火犯の話(チャペック)/盗まれた白象(マーク・トウェイン)/夏の愉しみ(A.アレー)/コーラス・ガール(チェーホフ)/異本「アメリカ…

怠けものの話(ちくま文学の森)

蝉(堀口大学)/警官と讃美歌(O.ヘンリー)/正直な泥棒(ドストエフスキー)/孔乙己(ヨンイーチー)(魯迅)/ジュール叔父(モーパッサン)/チョーカイさん(モルナール)/ビドウェル氏の私生活(サーバー)/リップ・ヴァン・ウィンクル(W.ア…

夜の公園

佐藤浩市がサラリーマンを演じていた車のコマーシャルで、「私の中に、俺が帰ってくる」というコピーがあったのを、やたらと気に入っていて、これはと思ったときについつい使ってしまい、筈氏にしょっぱい顔をされる。このコピー、一人称の持つイメージをが…

もうひとつの「変身ものがたり」

漱石夢十夜の「今に重くなるよ」は六つの小僧のせりふで、おぶっている我が子が、かつて自分が殺した盲目であったという夢の話。おぶっている子どもが実は自分の業であったというくだりは、何度読んでもおそろしい。わたしが抱いていた母親になることへの不…

変身ものがたり(ちくま文学の森)

死なない蛸(萩原朔太郎)/風博士(坂口安吾)/オノレ・シュブラックの失踪(アポリネール)/壁抜け男(エーメ)/鼻(ゴーゴリ)/のっぺらぼう(子母沢寛)/夢応の鯉魚(上田秋成)/魚服記(太宰治)/こうのとりになったカリフ(ハウフ)/妖精族の…

日々の泡

読み残していた30ページほどを、ちびちびと読んだ。ためいきが漏れてしまう。晴ちゃんが生まれたとき、この本を読んでいたことをきっと毎年の誕生日に思い出すんだろう。ひょっとしたら、これから毎年五月に読み返すのかもしれない。晴ちゃんの誕生と、胸…

名前をつけてやる

猫は、なんだか不思議ないきもので、三日の早朝に、三毛猫のみーちゃんがいきなり蒲団にもぐりこんできた。ふだんは蒲団の上でまるまって眠るだけで、中に入ってくることはない。トイレにいったら、おしるしがあって、病院にいって、入院して、その夕方にわ…

恐ろしい話(ちくま文学の森)

「出エジプト記」より 文語訳「旧約聖書」/詩人のナプキン(アポリネール)/バッソンピエール元帥の回想記から(ホフマンスタール)/蝿(ピランデルロ)/爪(アイリッシュ)/信号手(ディケンズ)/お前が犯人だ(ポー)/盗賊の花むこ(グリム)/ロカルノの女…

スパニッシュ・アパートメント

ジャパンプロモーションのキャッチコピーは「ひとつのアパートに七つの国の青春」だったとかで、まったく、青春群像劇なので参ってしまう。青春て、なんておろかな、浅薄な、ものなんだろうとため息がでる。それで、さいごに、主人公が、「彼も彼女もあれも…

タンタルス

ちくま文庫の内田百間集成は全24冊あって、それをときどき1冊ずつ買い足すのがひそかな愉しみでだったりする。本当は全部読んでしまいたいけれど、愉しみがなくなると勿体ないので少しずつ、買い足す。実際、百間先生の文章はとりとめなく飄々として、内…

臨月のシガーロス

いよいよ臨月をむかえる。名前を考えようと、漢字辞典をひらいて、あいうえお順に読みがならんだ索引をひきながら、ぺらりぺらりとやっていたら、「うまれる」の項は生産誕、「うむ」の項は生産娩、それぞれ漢字があてられていて、「うまれる」「うむ」のち…

おかしい話(ちくま文学の森)

おかし男の歌(長谷川四郎)/太陽の中の女(ボンテンペルリ)/死んでいる時間(エーメ)/粉屋の話(チョーサー)/結婚申込み(チェーホフ)/勉強記(坂口安吾)/ニコ狆先生(織田作之助)/いなか、の、じけん抄(夢野久作)/あたま山(林家正蔵)/大力物語(…

われはもとめうったえたり

エロイムエッサイム、という呪文をどこで聞いたのだか思い出せない。小学生の頃に、夕方、ゲゲゲの鬼太郎をテレビのアニメーションでみた記憶はあるものの、水木しげる作品をまっとうに読むのははじめて。読者をおいてけぼりにしてしまう水木氏の熱狂具合と…