まみ めも

つむじまがりといわれます

短歌ください 君の抜け殻篇

連休明けにひとつ歳をとった。1949年生まれの村上春樹と1988年生まれの木下龍也にはさまれているので、サンドイッチでいえば具に当たる。身にあまる光栄です。最近はツナマヨと人参サラダのサンドイッチばかり食べている。年明けからすでに人参一本ぶんをサンドイッチにした。ヘンリーくんシリーズに出てくるラモーナがサンドイッチのことをサミッジというので、いちいち脳内でサンドイッチをサミッジと変換してしまう。サミッジたべるんだあーい。

誕生日の前の日は、ひとりの時間をもらって往来をぶらつき、ロイヤルホストでりんごのパフェを食べてココアを飲み、冷凍のコスモドリアを買って帰った。誕生日ははじめての在宅勤務で、雪のちらつく寒さで底冷えがしんどく、一日でしもやけができた。お昼はコスモドリアをとことんあつくしてはふはふしながら食べる。園の保護者で陽性者が出たとかで、濃厚接触者になるであろうその家の子と濃厚接触者になるかもしれないうちの子の濃厚接触者であるわたくしは、はっきりするまで出社は控えて在宅勤務を続けろということになった。起きたままの姿で毛布にくるまりながら一日中パソコンの前でぽちぽちやっている。通勤の往復に本を読む時間だけがすっぽり抜けた。

ト。

昭和、外国、憧れ、忍者、遠足、敵…。『ダ・ヴィンチ』の読者投稿コーナーに寄せられた短歌から、人気歌人穂村弘がテーマごとに傑作を選出。それぞれの短歌に鮮やかな講評を付す。

生きていく理由はいくつおつけしますか?産まれた意味はあたためますか?栗原夢子

穂村弘が思ったよりだめじゃない人なのではないかという気がしてくる。だめじゃないやつはだめだ、と思っていたけれど、最近自信がない。

ともだちの話

仕事始めの五日に、仕事帰りに寄った駅前の八百屋で、人参と茄子を買い物かごに入れてレジにショップカードをかざしたらハッピーバースデーのメロディが流れた。誕生日の前後にいくと鳴るらしい。レシートとは別に、名前とお誕生日おめでとうと印刷された一枚の紙が出てきたのをパートのレジうちの女の人から渡された。今年のお誕生日を誰よりも早く祝ってくれたのは、八百屋だった。帰り道の足取りが少しだけ軽くなる。

5ともだちの話 (小学生までに読んでおきたい文学)

5ともだちの話 (小学生までに読んでおきたい文学)

  • 発売日: 2013/10/29
  • メディア: 単行本
 

ト。

吉行淳之介子供の領分」、ヘッセ「クジャクヤママユ」など、小学生までに読んでおきたい、ともだちの話を収録。小学5年生以上の漢字にルビをふり、見やすい図版入り脚注を付ける。松田哲夫による解説も掲載。

友だち 星 新一

画の悲み 国木田 独歩

故郷 魯迅

納豆合戦 菊池 寛

牛乳時代 中島 らも

クジャクヤママユ ヘッセ

子供の領分 吉行 淳之介

シシフシュ ボルヒェルト

みちのく 岡本 かの子

ある小さな物語 モルナール

苺の季節 コールドウェル

ボライ タゴール

菊の花 中野 重治

堅固な対象 V.ウルフ

自分と世の中が映る不思議な鏡-解説- 松田 哲夫

年末にいったよその町の図書館で児童書コーナーで選んだ一冊。セイちゃんと一緒に読む。小学生までに読まなかった話ばかりだったけれど、生きてるうちに間に合ったのでよかった。

ヒナギクのお茶の場合/海に落とした名前

家族だけで家で年末年始を過ごすのははじめてのことで、すっかり気が緩んでみんなしてねぼすけの寝正月を満喫した。年の瀬に鎌倉からおせちの材料をあれこれ送ってもらい、雀の絵付けのお皿に紅白のかまぼこ、伊達巻に昆布巻き、栗きんとんや黒豆やかずのこを並べてそれらしくした。お雑煮だけは用意した。母のお雑煮はするめいかの出汁だったけれど、用意がないので、うどん出汁のようなものを作って餅を浮かべる。柚子の皮と三つ葉とあさつき、お土産でもらった金箔をのせた。シンプルな雑煮が一番うまいと思うけれど、たしかに雑煮の雑の部分はまったくない。

ついたちは近くのイオンに出かけたらバスタオルが廉売で、五枚も買って帰った。バスタオルを漁っていたら知り合いのお母さんに声をかけられ、ふたりしてタオルをあさりながら新年の挨拶をする。中年が板についてきた感じのエピソードでいい一年のスタートだと思う。

ト。

「女には無理」と断られた照明係の仕事を、重いコードを毎日百回引きずって獲得したパンクな舞台美術家と作家の交流を描く「ヒナギクのお茶の場合」など、言葉とユーモアで境を超える全米図書賞作家の傑作9篇を収録。

ヒナギクのお茶の場合

枕木 p9-33

雲を拾う女 p34-85

ヒナギクのお茶の場合 p86-119

目星の花ちろめいて p120-134

所有者のパスワード p135-151

海に落とした名前

時差 p155-188

U.S.+S.R.極東欧のサウナ p189-225

土木計画 p226-241

海に落とした名前 p242-311

海に落とした名前、よかった。たしかにここ一週間の自分を雄弁に語るのはレシートの束かも、きょうは古いレシートを捨ててきたのでまっさらなわたし。

黄色い雨

年内にすべりこみで美容室にいく。ばさばさになってタイトルをつけるなら「生活に疲れた中年女性」でしかない頭を軽くしてもらい、さっぱりした。生活に疲れながらなんとかやっている中年女性になったと思う。そのあとドーナツショップでダブルチョコレートとカフェオレでひと休み、買い物を済ませて帰る。蒲鉾がここぞとばかりに売り場を広げて値上がりし、一年の帳尻を合わせようと追い上げている。ついでに焼き豆腐が軒並み売り切れていて、年の瀬はみんなすき焼きをやるらしい。うちもすき焼き肉をもらい、ねぎとしらたきはあるけれど、焼き豆腐のピースだけが欠けている。

黄色い雨 (河出文庫)

黄色い雨 (河出文庫)

 

金木書店。108円。

夜が、あの男のためにとどまっている。闇に閉ざされたアイニェーリェ村で、いったい何が起こったのか? スペインから彗星のごとく出現し、世界に「冷たい」熱狂を巻き起こしつつある奇蹟の小説。

結末がみえていながら光にあふれたお話だった。

ヘンリーくんとアバラー

仕事納めの朝、遊歩道の梅の白いつぼみがひらいている。通勤のいつもの電車はひとが疎ら。乗り換えの駅で毎日脱兎のいきおいで駆け出してくるひとたちも今日はいない。彼らは師走の師ではなかったらしい。なんとなくのんびりした気持ちで仕事にいく。

昨日はスケジュールがブランクだったので、仕事にでかけるふりをして会社には休みの連絡をいれ、コーヒーショップでシナモンロールとコーヒーを頼み、本をぺらぺら読み、少し足を伸ばしてはじめての図書館にでかけ、本で重たくなったかばんを抱えて買い物をして帰った。一年なんとか無事だった。

ト。

ヘンリーくんの飼い犬アバラーは、行くさきざきで面倒な騒ぎを起こし、ヘンリーくんはうんざり。念願のサケ釣りに連れて行ってもらったヘンリーくんは、アバラーのおかげで…ときにはよいことも! ヘンリーは今日もまた、なにかおもしろいことができないかなあと考えています。かい犬のアバラーのえさを買いに、おとうさんと出かけていると、おとうさんは、9月にサケつりに行くことを教えてくれました。ヘンリーもつれて行ってもらうやくそくをしました。でもそれまでに、またアバラーがいろんなことをしでかしてしまいます。

アバラー、ガソリンスタンドへ行く p5-43

ヘンリーと台所のごみ p44-91

ヘンリーのさんぱつ p92-126

ヘンリーの犬歯 p127-147

ラモーナとPTA p148-188

アバラー、つりに行く p189-224

ヘンリーのぼうけん p225-251

前に読んだのは2018年の年明けで、三年近くたって二度目だというのに、あんまり話を覚えていなかった。ヘンリーのぼうけんでグッときて、昼休みにデスクでうるうるしてしまった。何度でもグッとしようではないか。

村上朝日堂

うらうらとあたたかい日が続いて遊歩道の木瓜がいつのまにか咲いていた。梅のつぼみがふくらんでいる。クリスマスは鎌倉からケーキの贈り物があり、ビーフシチューとブッシュドノエルでお祝いをした。こどもたちにはクリスマスの朝にそれぞれプレゼントが用意されていた。土曜日、家族でクリスマス会をやろうと決めていたので、朝からミートソースとホワイトソースを煮て、ラザニアを重ね、白パンともも肉を焼き、チョコレートクリームとフィンガービスケットで切り株のケーキをつくった。無事に終わってほっとする。

村上朝日堂 (新潮文庫)

村上朝日堂 (新潮文庫)

 

ブ。

ビールと豆腐と引越しとヤクルト・スワローズが好きで、蟻ととかげと毛虫とフリオ・イグレシアスが嫌いで、あるときはムーミン・パパに、またあるときはロンメル将軍に思いを馳せる。そんな「村上春樹ワールド」を、ご存じ安西水丸画伯のイラストが彩ります。巻末には文・安西、画・村上と立場を替えた「逆転コラム」付き。これ一冊であなたも春樹&水丸ファミリーの仲間入り!?

シティ・ウォーキン(そば屋のビール/フェリー・ボート/タクシー・ドライバー/文京区千石と猫のピーター/大森一樹について/ダッフル・コートについて/ムーミン・パパと占星術について/あたり猫とスカ猫/ロンメル将軍と食堂車/ビリー・ワイルダーの「サンセット大通り」/フリオ・イグレシアスのどこが良いのだ!/「三省堂書店」で考えたこと/僕の出会った有名人/本の話/略語について/ケーサツの話/新聞を読まないことについて/ヴェトナム戦争問題/ダーティ・ハリー問題)/村上春樹安西水丸(千倉における朝食のあり方/千倉サーフィン・グラフィティー)ほか

村上春樹がバレンタイン・デーに切り干し大根を煮ていた話がいい。村上春樹は、佐々木マキとか和田誠とか安西水丸とか、本当に絶妙なところをわかってらっしゃる。

文学はおいしい

駅前の八百屋に、鮮やかな黄色がパック詰めされて38円だったので買って帰る。食用菊をはじめてたべたのは九年前で、お隣のおじいさんが庭先で黄と紫の菊を咲かせていて声をかけたら、たべてみっかとわけてくれた。そのおじいさんは骨を折って入院したとかで夏ごろから姿を見かけない。おじいさんのちゃんちゃんこや干していた布団の柄まで懐かしい。

持ち帰った菊の花びらを毟り、茹でて、大根おろしと和えてぽん酢で食べた。丁寧な暮らしっぽいことをしている自分に一抹のうしろめたさがあり、バランスを取るためにポテトチップスを一緒に買ったりして。

文学はおいしい。

文学はおいしい。

 

ト。

日本の食と文学への愛を綴ったエッセイ集。カラーの料理挿絵つき。共同通信社配信の連載を改題して単行本化。

カツ丼:吉本ばなな『キッチン』/牛鍋:仮名垣魯文安愚楽鍋』/すき焼き:田辺聖子『人情すきやき譚』/湯豆腐:久保田万太郎の名句/コロッケ:幸田文『流れる』/鯖の味噌煮:森鴎外『雁』/サワラ:村上春樹ねじまき鳥クロニクル』/ホヤ:三浦哲郎「火の中の細道」/鯛:谷崎潤一郎細雪』/おむすび:石川淳『焼跡のイエス』/白玉:永井荷風『墨東奇譚』/冷奴:安岡章太郎『酒屋へ三里豆腐屋へ二里』/ビール:田山花袋田舎教師』/鮨:志賀直哉小僧の神様』/心太:泉鏡花『縷紅新草』/トンカツ:太宰治『グッド・バイ』/秋刀魚:佐藤春夫「秋刀魚の歌」/鰹節:宮尾登美子『櫂』/アイスクリーム:夏目漱石『こころ』/お好み焼き:高見順『如何なる星の下に』/きつねうどん:壺井栄二十四の瞳』/天ぷら:中里恒子『時雨の記』/鳥鍋:川端康成伊豆の踊子』/蛸しゃぶ:川上弘美センセイの鞄』/そば:永井龍男「冬の日」/納豆:野村胡堂『食魔』/ごり汁:室生犀星『漁眠洞随筆』/根深汁:池波正太郎剣客商売』/ラーメン:長谷川伸『ある市井の徒』…など100点100余作。

読むことと食べることでダブルで味わう作品たち。