まみ めも

つむじまがりといわれます

シコふんじゃった。

ままならないことが増えていく。父は胃瘻がうまくいかず、日に日に衰える。ナースコールを手にとって呼ぶこともできなくなり、なんとか押せる方の手にボタンを握りしめて過ごしているらしい。相変わらず死の棘している母はままならない父にも苛立ちがつのり、きょうは看病をボイコットして長野まで車を走らせ道の駅でりんごを買ってきた。カーッときたときの母の目はやばく、ままならないながら父の目は冴えている。どうにかしてやりたいがどうにもならない。母がいなければ見舞いにもいけない。夜、こども四人を寝かしたあとで、スーパードライと柿ピーを一気に流し込み、ひっそりと泣く。

ふくちゃんがじいじに書いた手紙。

じいじはそとにでれないけどぼくはでれるよ。だからいまからじいじにそとのことをおしえてあげます。いまのいしかわはちょっとむしあつくってすごくかえるがおおいよ!いままであそんでくれたりおすもうのとっくんとかいっぱいやきとりをたべたりしたよね。ぼくもできるだけがんばるよ。

せいちゃんも、起きぬけにじいじのかなしい夢を見たらしく、泣きながら目を覚ましていた。

シコふんじゃった。

シコふんじゃった。

 

ト。

「ファンシイダンス」の周防正行が、ひょんなことから廃部寸前の相撲部に入るハメになった大学生の奮闘をコミカルに描いたスポ根コメディ。父親のコネで就職も決まっていた教立大学4年の秋平は、ある日、卒論指導教授の穴山に呼び出され、授業に一度も出席しなかったことを理由に、卒業と引き換えに穴山が顧問をする相撲部の試合に出るよう頼まれる。しかし、その相撲部にいたのはまだ一度も勝ったことのない8年生の清水ひとりだった……。

夏休みで暇を持て余し気味のこどもたちと。1992年のモックンのまわし姿がとてもいい。

帰ってきた日々ごはん〈1〉

実家にもどったなりで出ばなをくじかれてしまい、世界からはじかれていた自分を思い出す。炊きたてのごはんのおいしさにむなしくなってしまい、おかわりを二杯した。ぷよひめという名前のトマトに親近感をおぼえたけれど、ぷよではあってもひめではない。ひょっとしたらぷよなんてかわいいぶった擬態語からもはじかれている。根深いコンプレックスに再会、じゃない方のみなさん、どうぞよろしく。

帰ってきた 日々ごはん〈1〉

帰ってきた 日々ごはん〈1〉

 

ト。

「日々ごはん」からとぎれることなく続いていた、人気料理家・高山なおみの日記エッセイ。公式ホームページ『ふくう食堂』『小説新潮』等に掲載した2008年11月〜2012年9月までの日記を加筆修正。おまけレシピつき。

「ココアどこわたしはゴマだれ」できゃぴきゃぴした高山なおみにあてられてしまい敬遠気味だったけれど、久しぶりに読む気になった。帰ってくる前の日々ごはんを知らないので、誰が誰やら。庄野潤三を読みはじめたときも、そういえばこういう内輪ぶりにおいてけぼりをくらったっけ。料理研究家のわりに食卓に気負いがなくスーパーのおそうざいで済ませていたりするのがよい。おかずに、(いつぞやの)とあるのも好ましい。レシピはないけれど鰻のちらし寿司をやってみたい。ゆかり、いれちゃうんだ?

鰻のちらし寿司(いり卵、みょうが、胡瓜、新生姜、青じそ、ごま、ゆかり)

おいしい記憶

ジャワカレーの反町隆史にムラムラっときて、牛肩のかたまり肉を買い、 レシピにある甘とうがらしがよくわからなかったのでぴり辛ピーマンという長いみどりとがったのを炒めて、ジャワカレーのルウを溶かし込んで作ってやった。盛夏に食べるカレーの最適解。2019年のわたしの夏のワーク終了。

「大草原」でローラの初恋相手のジョニーがオートミールクッキーが好物だというので、それも作った。インガルス家のクッキーには入らなかったであろうチョコレートを刻んでいれた。がりがりかじると開拓時代の大地を味わっているようなたくましい気持ちがする。

おいしい記憶 (単行本)

おいしい記憶 (単行本)

 

ト。

母のおこわ 上戸 彩

食の45年史 小島 慶子

思い出の味は、非日常 柴門 ふみ

特別おいしいってわけではなくっても 中島 京子

昭和38年の甘みと塩からみ 姫野 カオルコ

きのこ熱 平松 洋子

母から伝える味 堀江 ひろ子

自分でプレゼンした『くいしん坊』 松岡 修造

銀座の食の物語 宮本 亜門

イカラな祖母の熱々のおにぎり 森 久美子

「三色弁当」に込めた母の思い 大和 悠河

八州男の黒帯 山本 一力

キッコーマン賞 一般の部-あなたの『おいしい記憶』をおしえてくださいコンテスト-

キッコーマン賞 小学校低学年の部-あなたの『おいしい記憶』をおしえてくださいコンテスト- 

 柴門ふみの父親が山中で死んで、地元に連れ帰る余地なく火葬したあとで食べたおにぎりの味が抜群だったエピソードがいい。そんなときにおいしいと思えるなんて、すこやかでいいなあとおもう。

村上春樹雑文集

ばあちゃんのお弔いにはげんちゃんとふたりで出た。ばあちゃんらしい、立派な死に顔だった。化粧の似合わない、豪快で気持ちのよいひとだったなあと思い出す。蚊帳を吊ったなかにみんなで寝転んでしりとりをしたっけ、ほおずきを揉んで笛をつくってもらったこと、背中をばちんと叩く力強さ、洗濯ものを几帳面にたたんでいた手つき。十人きょうだいの六番目で、家のなかはしっちゃかめっちゃかして、なすの煮物のなかに雑巾が入っていたという逸話がある。遊びにいくと、まみぃや、ここなごーなってやすめや、とかけてくれた声を、いまは頭のなかで再生できるけれど、もうそれを取り出すことはできないと思うと不安になる。

お弔いのあとでおとうさんのお見舞いにいき、げんちゃんを腕のなかに入れ、ばあちゃんからきた手紙を渡す。おとうさん、耳がいっそう遠くなり、ろれつもまわらず、話をするのが難しい。キイトルーダの副作用なのか、しびれもひどいらしい。とどまってほしいと思いながらなすすべなくずるずると時間がすぎる。

村上春樹 雑文集

村上春樹 雑文集

 

ト。

 エルサレム賞スピーチ「壁と卵」、海外版への序文、音楽論、書評、人物論、結婚式のメッセージなど、村上春樹がセレクトした未収録の作品、未発表の文章69編を収録。安西水丸和田誠の解説対談も掲載。

前書き――どこまでも雑多な心持ち
序文・解説など
自己とは何か(あるいはおいしい牡蠣フライの食べ方)
同じ空気を吸っているんだな、ということ
僕らが生きている困った世界
安西水丸はあなたを見ている
あいさつ・メッセージなど
「四十歳になれば」――群像新人文学賞・受賞の言葉
「先はまだ長いので」――野間文芸新人賞・受賞の言葉
「ぜんぜん忘れてていい」――谷崎賞をとったころ
「不思議であって、不思議でもない」――朝日賞・受賞のあいさつ
「今になって突然というか」――早稲田大学坪内逍遥大賞・受賞のあいさつ
「まだまわりにたくさんあるはず」――毎日出版文化賞・受賞のあいさつ
「枝葉が激しく揺れようと」――新風賞・受賞のあいさつ
自分の内側の未知の場所を探索できた
ドーナッツをかじりながら
いいときにはとてもいい
「壁と卵」――エルサレム賞・受賞のあいさつ
音楽について
余白のある音楽は聴き飽きない
ジム・モリソンのソウル・キッチン
ノルウェイの木を見て森を見ず
日本人にジャズは理解できているんだろうか
ビル・クロウとの会話
ニューヨークの秋
みんなが海をもてたなら
煙が目にしみたりして
ひたむきなピアニスト
言い出しかねて
ノーホェア・マン(どこにもいけない人)
ビリー・ホリデイの話
アンダーグラウンド』をめぐって
東京の地下のブラック・マジック
共生を求める人々、求めない人々
血肉のある言葉を求めて
翻訳すること、翻訳されること
翻訳することと、翻訳されること
僕の中の『キャッチャー』
準古典小説としての『ロング・グッドバイ
へら鹿(ムース)を追って
スティーヴン・キングの絶望と愛――良質の恐怖表現
ティム・オブライエンプリンストン大学に来た日のこと
バッハとオースターの効用
グレイス・ペイリーの中毒的「歯ごたえ」
レイモンド・カーヴァーの世界
スコット・フィッツジェラルド――ジャズ・エイジの旗手
小説より面白い?
たった一度の出会いが残してくれたもの
器量のある小説
カズオ・イシグロのような同時代作家を持つこと
翻訳の神様
人物について
安西水丸は褒めるしかない
動物園のツウ
都築響一的世界のなりたち
蒐集する目と、説得する言葉
チップ・キッドの仕事
「河合先生」と「河合隼雄
目にしたこと、心に思ったこと
デイヴ・ヒルトンのシーズン
正しいアイロンのかけ方
にしんの話
ジャック・ロンドンの入れ歯
風のことを考えよう
TONY TAKITANIのためのコメント
違う響きを求めて
質問とその回答
うまく歳をとるのはむずかしい
ポスト・コミュニズムの世界からの質問
短いフィクション――『夜のくもざる』アウトテイク
愛なき世界
柄谷行人
茂みの中の野ネズミ
小説を書くということ
柔らかな魂
遠くまで旅する部屋
自分の物語と、自分の文体
温かみを醸し出す小説を
凍った海と斧
物語の善きサイクル
解説対談 安西水丸×和田 誠

安西水丸和田誠がタッグを組んだら脱力感がはんぱない。ジャック・ロンドンの入れ歯の話(「人間がどれだけ死力を尽くして何かを追求したところで、その分野で人々に認められるのは稀なことなのだ」という教訓)、Norwegian Woodの最初のタイトルは"Knowing She Would"だったというエピソードもよかったけれど、安西水丸和田誠が対談で村上春樹のことを「二日酔いもしないし、肩こりもない。絵もうまいし、料理もうまい…。ピアノも弾けるし、マラソンをするスポーツマン。締め切りもきちっと守るし、字はカリントウみたいで読みやすい。」とほめ殺しているのもにくい。「いいときにはとてもいい」はその水丸さんの娘のかおりさんの結婚の祝電。

「かおりさん、ご結婚おめでとうございます。僕もいちどしか結婚したことがないので、くわしいことはよくわかりませんが、結婚というのは、いいときにはとてもいいものです。あまりよくないときには、僕はいつもなにかべつのことを考えるようにしています。でもいいときには、とてもいいものです。いいときがたくさんあることをお祈りしています。お幸せに。」

そんなわけで、結婚のことはおいといて、できるだけべつのことを考えていよう。いいときがたくさんあれば、そりゃいいよね。

マリー・アントワネット

BSプレミアムで再放送している「大草原の小さな家」を録画して、家族みんなでみるのが週末のお定まりになっている。先週は「おめでとうエミーおばあさん」という回で、生きているうちにこどもに会いたいという一心で牧師さんや知人に嘘をついてお葬式をやろうとする話だった。生前葬のハシリだ。そのエピソードをみた翌月曜の朝、ばあちゃんが2時28分に息を引き取ったとの知らせが入った。さいごに会ったのは四年前で、ふーたんを抱いてもらったのを覚えている。かわいがってもらったのに、それっきり会いにいかず、不義理をした。エミーおばあさんではないけれど、無理してでも会いにいかなければならなかった。荷造りの合間に押入れから手紙のしまってあるボックスを取り出してみたら、ばあちゃんからの手紙があった。北國銀行のむこうが透けるような薄紙の便箋に毛筆でしたためてある。文末に空白を利用して祇園精舎の鐘の聲ではじまる平家物語の一節。NHKスペシャルで「アイちゃんの子育て日記」をやったというので、2001年のゴールデンウイークに書かれた手紙だ。その手紙を荷物にしまい、生きているうちには間に合わなかったけれど、ばあちゃんのお弔いにげんちゃんとふたりで向かう。新幹線の駅で、時間があったので、スタバでアイスコーヒーを魔法瓶にたっぷり詰めてもらい、ミルクとはちみつを足す。それと、PAULに寄ってアンシェン・トンを買い、ホームで硬いパンを引きちぎりながら食べておそ昼をした。パン屑がげんちゃんの額におちる。車内は、サラリーマンと、宗教団体とおぼしき身なりのよいおばさんたちで混み合っていた。

マリー・アントワネット (通常版) [DVD]

マリー・アントワネット (通常版) [DVD]

 

プ。

 14歳でフランス王家へ嫁ぎ、18歳で即位した王妃マリー・アントワネット。きらびやかな宮殿生活とは裏腹に、妻、母、そしてひとりの女性として揺れ動く心の軌跡を「ロスト・イン・トランスレーション」のS・コッポラ監督が描く。ベルサイユ宮殿で大規模な撮影を行い、王室の豪華な衣装や風景を再現。軽快なロックナンバーにのせ、ポップで色彩豊かな映像でスタイリッシュにつづる歴史ドラマ。アカデミー衣装デザイン賞受賞。

スパイダーマンをみたあとで、キルスティン・ダンストの段ちがいの甘やかなきらめきにはっとする。カメラのレンズは監督のひとみなのだなと思う。甘いきらめきにくらくらしていたら、近くのフランス菓子の店が、桃と薔薇の一週間と称してピンク菓子を売り出していたのでふるって買いに行く。脳天をとろかす甘さ。甘すぎるものに溺れたいときだってあるんだよ。

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海の日の7月15日にようやく初蝉、蒸し暑い日が続く。肌が荒れて、これまで使っていた洋服がことごとくちくちくあたるようになった。おっぱいが張るのもあって、あらゆる服が似合わない。どもならんのでユニクロで期間限定で廉売していたジーンズを色違いで三本購う。綿100%ではなく2%のポリウレタンがはいった混じりものだけどコスパ考えたらしゃあない。こんな凸凹のからだをそれなりに見せてくれてありがとうな。下着もゴムや化繊が耐えられんのでこちらは混じりけなし綿100%のゴムなしのを買った。ときめきのない下着。でも肌当たりは最高。

安美錦の引退にしんみりしたけれども千秋楽。郷土力士の炎鵬や遠藤がいい相撲で勝ち、鶴竜白鵬横綱対決も迫力があって、ほくほくした気持ちで風呂の湯に浸かった。一日のうち、10分だけ、湯舟に浸るひとりの時間。

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BS日テレで七夕に放映。

海外ではベトナム戦争、国内では反戦運動全共闘運動が激しかった1969年から1972年という時代を背景に、理想に燃える記者が左翼思想の学生と出会い、奇妙なきずなで結ばれていく社会派エンターテインメント。川本三郎がジャーナリスト時代の経験を記したノンフィクションを『リンダ リンダ リンダ』の山下敦弘監督が映像化。激動の時代を駆け抜けた若者たちの青春を初共演で体現する、妻夫木聡松山ケンイチの熱演から目が離せない。

全共闘運動が最も激しかった1960年代後半、週刊誌編集部で働く記者・沢田(妻夫木 聡)は、理想に燃えながら日々活動家たちの取材を続けていた。ある日、梅山と名乗る男(松山ケンイチ)から接触を受けた沢田は、武装決起するという梅山の言葉を疑いながらも、不思議な親近感と同時代感を覚えてしまう。

川本三郎にはどこまでもついていきたい気持ちなので録画。妻夫木聡のたれ目具合はたしかにちょっと川本三郎かも。松山ケンイチのクソ男ぶりはなかなか抜群だった。タイトルにはちゃんとナカグロが入っていて、丸谷才一が怒らない仕様なので誰知らずほっとする。

 

愛がなんだ

先週、友だちからパンと手作りのもものジャムが届いた。香ばしいパンは、ヒンメルというドイツパンの店のものらしい。さっすが、東京のパンはうめえなあと感心してしまった。

同じようにだれかにしたくなり、半月おくれであかちゃんをうんだ友だちのところに、おかずをこさえて持っていく。一歳とししたの友だちに対する気持ちが完全におかんになっている。切干大根の煮物と人参しりしり、蒸した鶏肉をほぐして、タッパーに詰めてった。いい加減な性格で、いま思えば味見ぐらいするべきだった。

愛がなんだ (角川文庫)

愛がなんだ (角川文庫)

 

ト。ダ・ヴィンチブックスの単行本。

最近、誰かのことを好きになったことはありますか? 人を本気で好きになることの幸せと孤独、喜びと切なさを思い出させてくれる、そんな一途な女性が主人公の物語です。

テルコのやることなすこと、身に覚えがありすぎておそろしい。好きな男から、捨てといて、と渡された菓子パンの袋を後生だいじにもってスーハー吸ってあんパンよろしくらりっていたのは、ほかならぬわたしです。