2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧
入院の荷物に、本を三冊いれた。そのうちの一冊は読みさしの庄野潤三。前期破水をやって明け方に入院したときには陣痛はあるようなないような、十分おきにあるかとおもうと一時間こなかったり、ずいぶんと気まぐれなもんだった。朝になって母親がいったん帰…
冬のボーナスがでたときに、思い切って久生十蘭全集のひとつめを買った。とても持ち歩けるような代物でなく、なかなかページをめくれないでいるが、急いで読んだところで忘れてしまうのだから苦にもならない。全集の月報に橋本治が寄稿していて、桃尻娘とい…
三時半に目が覚めてトイレにいったら、破水した。パジャマを濡らしたままで階上に寝る母を電話で起こし、浦和の筈氏に電話をし、産婦人科に電話をし、着替えを済まし、荷造りをし、ねむっている息子を父にまかし、して、表にでたら、北斗七星が目のまえにあ…
予定日を過ぎたが気配があるやらないやらよくわからないでいる。歩いたほうがお腹によかろうと考えて、きのうは一時間そこらを歩きまわる。家の裏は田んぼがひろがって、その中を桜並木の遊歩道が続いている。どこまであるだろうと端まで歩いて帰ってきたら…
お医者から出産秒読みを告げられた週末、三週間ぶりで筈氏が来た。前回の妊娠期間からかんがえると、すわ出産かという気運も高まったが、うまれなかった。土曜は航空プラザで飛行機をながめ、日曜は動物園にでかけた。息子氏はゴリラをみたかったらしいが、…
月曜日、朝はひんやりと空気が冴えていたが、表にでると随分あたたかい。昼のニュースでちかくに熊が出没しているといっていた。夕方、保育園あがりの息子氏をのせてさくらを見に出かける。通っていた高校のそばを通ると、川の護岸工事で風景がさま変わり、…
桜の満開と日曜日とお天気がいちどきにやってきて、ちいさく奇跡のような一日。犬の散歩に同行し、たんぼの真ん中を桜並木がのびる遊歩道であそぶ。ぼうやはたんぽぽとつくしの名前をおぼえた。ぷちぷちと手に摘んで握りしめるので手のひらがたんぽぽの黄色…
桜の花の淡いいろが風景を薄ぼんやりと暮れさせるとなんだか現実感がうすれて世の中との距離がつかめなくなりちょっとした疎外感にとらわれる。出産がもうすぐやってくるというのにフワフワした気持ちになっていけない。出産はファンタジーだが痛みはリアル…
なのはな / 幸田文 犬の話 / 小沼丹 チャンプのこと / 池内紀 押入れの主 / 群ようこ 犬はかじる / 小川洋子 隣りの犬 / 向田邦子 ガラス越しの犬 / 伊集院静 犬 / 佐藤洋子 ミミの死 / 近藤紘一 ダーキイのお産 / 江藤淳 愛犬家は旅先で出会った犬を心にか…
2001年宇宙の旅といえば「ツァラトゥストラはかく語りき」という例のテーマ曲で、でんどんでんどん…ぱやー、と歌ってみせたら筈氏がおもいきり苦い顔をしたことがあった。もちろんツァラトゥストラはぱやーとは語らなかったとおもうが、でんどんで張りつ…
ピンポンが鳴り玄関先にでてみたら見知らぬ中年男がディズニーの袋を抱えて立っている。なんだろうとぼんやり応対していると母が奥からでてきてうれしそうに荷物を受け取った。台所の食卓のうえに広げられた品はやたらファンシーな鞄で、青の地にワッペンを…
急にあたたかくなって、朝、庭にでたら一気にひらいたチューリップがびらりと蕾の内部をさらけ出し一見するとなんの花だかわからないような様態を示していてぎょっとする。夕方になって気温が落ちついてきたらようやくチューリップらしい形状におさまってい…
1992年7月から1995年9月まで、井上ひさしがニホン語にまつわる日記をとりとめなく書きつけた一冊。活字おたくっぷりが炸裂。日記なのでそのときどきのニュースや流行、たとえば悪魔ちゃん事件や筒井康隆の断筆宣言、ポケベルの流行、野茂の大リー…
宇野千代が98歳でなくなる三年前、95歳のころの本。わたしは食い意地が張っているので、こういう類の料理本をみるとなんとなく買ってしまう。百円だし。レシピ本というつもりはなくて、華やかな男性遍歴を経たお婆ちゃんは一体どんなものを食べてどんなこと…
ひとりめが5/3にうまれたときに53は素数だなあと心ひそかによろこんでおり、なんとなくふたりめは4/7に出てくるのではないかと期待していた。金曜日に健診にいったところがお医者がもういつ出てもおかしくないと言ったので勝手に気分は盛り上がって…
銀座のカフェーの女給君江は容貌は十人並だが物言う時、「瓢の種のような歯の間から、舌の先を動かすのが一際愛くるしい」女性である。この、淫蕩だが逞しい生活力のある主人公に、パトロンの通俗作家清岡をはじめ彼女を取巻く男性の浅薄な生き方を対比させ…
風呂からあがったら母親が腹のでっぱりがすこしおりてきたようだという。心なしか、腹のなかでうごうごしたときに感じる場所もちがってきたようだ。お産が近づくにつれて前回のことを思い出してきた。出産自体は痛みを伴ったものの、ファンタジーさと突き抜…
おとついの風はものすごかった。玄関先においていた牛乳配達のボックスが消えたし、庭の植木が一本根こそぎ持ちあがって傾いてしまった。浮いた根のところに乗っかってみたが復する気配なし、風が吹くたびにぎいぎいと傾いて根が浮くので心もとないったらあ…
ブックオフオンラインで百円。表紙をめくったら一面あざやかなピンク色に目を奪われた。芝桜に似ているが、花のことはよくわからない。芝桜は実家の庭に咲いていたせいか、実家をはなれてから好きになった。つゆくさといい、芝桜といい、苔といい、地面には…
つたやで映画を借り出す。夫氏にすすめられた四本のタイトルを店員に提示して探しだしてもらうが、ブエノスアイレスというのだけみつからなかった。まえの妊娠のときは、週末は毛布をかぶってつたやで借りた映画をいくつもみたことを思い出す。オムライスや…
氷の宮殿/冬の夢/金持の御曹子/乗継ぎのための三時間/泳ぐ人たち/バビロン再訪 こないだ散歩に携帯する一冊をえらぶのに、ポケットにいれるので文庫本をとなんとなくフィツジェラルド(新潮文庫的にはフィッツジェラルドではないらしい)をつっこんだ。…
午前十時の映画祭のコマーシャルでスポット的にラストシーンだけは見ていた。ダスティン・ホフマンが花嫁と逃げ出す例のシーン。なんとなくこてこてのラブストーリーだろうとおもって気楽にかまえていたが、とんでもない映画だった。初恋のきた道は定石をす…