まみ めも

つむじまがりといわれます

2019-01-01から1年間の記事一覧

狸ビール

大晦日の朝はすこし早く起きて寝ぼけまなこで朝ごはんをすませてから仏壇に手を合わせ、荒れる予感に満ちた北陸の天気に押し出されるように、鎌倉までやってきた。 駅のホームで、いつまでも手を振るおかあさんの小さく細い体がせつなくて、なのにどうして心…

もものかんづめ

兄の新築の家にみんなで集まって、忘年会のようなことをした。兄嫁のつくる几帳面な顔をしたごはんたち。豚汁、煮物、ちらし寿司、揚げないコロッケ、生ハム、クリームチーズ 。一軒家をたて、ローンを組み、数十年ものの月々払いを背負い込むということに、…

マザコン

実家に来た日に食べた刺身がねっとりと甘かった。ぶり、ひらめ、いか、まぐろ。きょうは北陸の冬には珍しく青空で、犬の散歩に出た日暮れどき、白山がのぞいて、帰り道には下弦の月と宵の明星で、夕焼けがぎりぎりの低さまで見える空の広さに、深い夜更の予…

パスタぎらい

げんちゃんの熱がさがって二日たち、予定より遅れて実家に帰ってきた。おとうさんの四十九日には間に合わなかった。これまで「だめじゃない男はだめだ」と思ってきたけれど、齢四十を間近にして、だめじゃない男はだめじゃないのでは?ということについに気…

たやすみなさい

週明けにせいちゃんにインフルエンザの診断がくだり、 高熱でふらふらでひとりで寝るのを不安がるので、ベッドの傍に布団を敷いて寝たけれども、なんだか自分も咳が出るなと思ったらその咳が関節にやたらみしみし響き、床が固くて関節が痛むのかと思いきや枕…

めぐる季節の話

木枯しが吹いてます、とおかあさんに連絡をいれる。返事はこない。木枯しは、北陸の冬にはなかった。北陸の冬にあるのはどんより暗い空と雪雷とわすれたころにちょっとの晴れ間。こちらでは晴れの分量が多いのに、北陸育ちで身についてしまった晴れ間を惜し…

ひとりメシの極意

六日と七日とが、ここらへんではもっとも早い日の入りだった。16:28:11の日没を二回繰り返したあとで秒刻みで夕暮れがのびていく、でも寒さはここからいよいよ深くなるという夕暮れの空に向かって歩く帰り道、冬の入り口に立っているという気持ちがする。遊…

つきよに

浦和に戻ってから疲れが出て家族が順々に体調を崩し、なんとなくこちらまでぼうっとしてやわらかいうどんばかり啜っている。一度だけ、おとうさんが夢に出てきた。その日は昼間から眠くてねむくて、夜、ベッドでうとうととしたときに、寝床に並べて敷いた布…

うさぎ屋のひみつ

おとうさんが死んだ翌朝は、小春日和のさわやかな朝陽が白山のシルエットを作っていた。角のコンビニでダブルソフトとバターロール、お茶と牛乳とヨーグルトを買い込んで、朝ごはん。朝風呂に浸かり、ふとんを片付け、お客が途切れ途切れにあり、葬儀の打ち…

ド・レミの子守歌

いよいよの局面が波状に押し寄せていたおとうさんだったけれど、こないだ触れた手足のつめたさに本当にいよいよなのだなという気がしたので、こどもたちと帰ることにして、新幹線のなかで食べるおにぎりを作っておやつやジュースと一緒に巾着に詰めたりして…

まどろむ夜のUFO

いろいろなことに算段をつけないままあわてて新幹線に乗ったので、いつまでもいられず金曜にうちに戻った。木曜、病室にお兄ちゃんも来て、久しぶりに家族がそろった。家族でおとうさんの葬式の話をする。おとうさんは金曜に気管切開の手術を受けた。まぶた…

村上春樹全作品-1990〜2000 [2]-5 ねじまき鳥クロニクル 2

お隣のおじいさんが育てている食用菊の黄色がまぶしい。秋の日の光が斜めにさして、刹那の感じがする。朝の送りで歩く道すがら、天気の良い日はいつも布団を干している家があり、大通りで朝日を浴びている布団を見るといてもたってもいられなくなり、慌てて…

グラン・トリノ

水曜、ふーたんの遠足で六時起き。リクエストのから揚げを作る。今回は土井義晴レシピで、小麦粉と片栗粉を順番にまぶしてからコールドスタートで揚げる。二度揚げレシピより汚れないのがいい。ほかのおかずは作りおきで、大学いも、人参の甘いソテー、ブロ…

買い物の九割は失敗です

日曜の昼下がり、5か月にしてはじめておひとりさまの時間をもらった。お目当てのカフェは席がなかったので早々に見切ってロイホに入る。今柊二を読んだばかりでホットファッジサンデーにとてもとても惹かれたけれどシーズンメニューの渋皮栗とほうじ茶のモ…

スイーツ放浪記

金曜で結婚式から10年だった。わが家では夫婦の記念日になんとなくオムライスやハントンライスを食べる習わしになっていて、やっぱりオムライスをつくった。いつもはチキンライスに卵を炒めてのせるけれど、野菜だけのケチャップライスにして、もも肉は大…

村上春樹全作品-1990〜2000 [2]-4 ねじまき鳥クロニクル 1

金木犀が雨で落ちてしまい季節のすごろくがまたひとつ進んだ。 月曜日、ふくちゃんの遠足で六時起きして弁当作り。リクエストのお品書きを書いてもらった。縦書き。 うめぼしおにぎり てりやき あまくにたにんじん、さつまいも きりぼしだいこん 塩もみのき…

オデッセイ

週末、ふーたんの運動会。ぴょんぴょん跳ねて踊って、親子競技はセイちゃんにお願いして、2度も走った。セイちゃんは小学生競技に出て、鉄棒で頭から落っこちるのでひやひやした。人前の失敗をいやがるふくちゃんは競技には出ず、おじいちゃんの膝に甘えて…

むらさきのスカートの女

よくいくスーパーが周年祭で豚ひき肉が廉売だったので買い込み、週末に餃子をこさえた。ひき肉を練ったところにみじんのキャベツを混ぜて味付けをして、にら入りとパクチー入り。大判の餃子の皮30枚をつかって、にら60個、パクチー30個。赤子泣いても…

さよならのあとで

台風一過でなにかが一挙に花開いたらしく、鼻はぐずぐずするし、目も身体もかゆくて、全身くまなくフェミニーナ軟膏のお世話になりたいくらいデリケートになってしまった。心のなかだけは折りよくタフなタイミングでよかった。どこかの下着メーカーが、胸を…

患者の事情

土曜は台風19号で一発日外に出られなかった。朝から湯を沸かしてポットに詰めたり、おにぎりを作ったり、パンを焼いたり、カレーを保温鍋にあたためたり、とにかく停電に備えておく。暇つぶしにAmazonプライムでゴーストバスターズとミッション・インポッシ…

喪失学

iPhoneをことあるごとに落っことしたり、雑に扱っていたらついにいかれてきたようで、辺縁部のタッチがきかなくなってしまった。いろいろ不自由はありながらあの手この手でごまかしながら使い続けている。肝が小さいので、スマホ機種の値段を見るとびびって…

カリートの道

2月にパーマをあててからもさもさと伸び放題になってひとつにまとめるしかなくなっていた髪をやっと切った。伸びきった前髪にあわせてワンレングスに耳の下でそろえてもらう。パーマの残ったうねりもなくなった。西陽を背にしたときに、のびる影のシルエッ…

フィフティ・ピープル

土曜の午後は運動会を引き上げて、ぐずるげんちゃんを抱いたままソファでうたた寝、夕方はアイルランド戦を見て盛り上がり、夕飯はジュースとグリーンラベルで乾杯し餃子を食べた。げんちゃんは熱が続いたあとで咳がひどくなり喉がごろごろいっている。月曜…

ミッション

金曜日はフル回転、ふーたんを送ってから週末のお弁当の買い出し、おかずをいくつかこしらえておく。人参とさつまいもを甘くソテーし、たまご四つで甘くした玉子焼き、切り干し大根と油揚げの煮もの。夕飯のカレーライスも仕込んでおく。げんちゃんの予防接…

セックスボランティア

また廉売になっていた栗に手を出してしまった。今度は圧力鍋ですこしだけ火を入れてから鬼皮をむくアプローチ。いくつか渋皮も剥いてしまう。ちょっとしたことを丁寧にやれないので、栗の渋皮煮なんてとても手に負える代物ではないはずなのに、栗を見かける…

チェンジリング

H&Mのネット通販でぺらぺらくたくたしたTシャツが599円なのをさらに2割引で買う。あさっての方向が透けて見えるような頼りなさがいい。リネンのシャツは着心地がいいけれど、げんちゃんの肌にあたりが強いので敬遠してしまう。こういうときはやっぱりコ…

待ち遠しい

連休にせっせとこさえた渋皮煮、煮込んで瓶に詰めて3日ねかせたので、味見してみたら裏切りのようにかたかった。鍋のことを忘れてぐらぐら煮立っていたのがいけなかったのか。圧力鍋に蜜ごとうつして5分加圧して、なんと手のかかる代物に手を出してしまっ…

冒険者たち

いろいろあってお見舞いはペンディング。久しぶりにとっぷり落ち込む。連休はまだ本調子ではないふーたんとおつかいやどんぐり拾いをして近場で過ごす。栗が廉売で500グラム200円だったので、むらむらと手を出してしまう。一晩水に浸して鬼皮をむいた…

ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室

台風一過から体調を崩したふーたんに付き添って、結局ほとんど外に出ないまま週末になってしまった。だいすきな卵でおかゆやサンドイッチや目玉焼きを作ってやると、おいしいとはしゃぐものの半分も食べられない。近くのスーパーまでハムやパンを買いに出た…

忘れない味

おとうさん、週末からいよいよモルヒネを使っている。いよいよ、という局面が順番にやってくる。肺がんに髄膜播種というキーワードで引っかかってきた文献を読んで予後のだいたいのところはわかっていたけれど、わかっていることと実際に起こることとはやっ…