まみ めも

つむじまがりといわれます

世界は笑う

世界は笑う (新・ちくま文学の森)
十二夜より(シェークスピア)/お笑い競キリン(秋田実)/対話(山本周五郎)/耳かき抄(木山捷平)/トワーヌ(モーパッサン)/成績簿なんてこわくない(ゴシニ)/親愛なるグレタ・ガルボ様(サローヤン)/血圧(ラニアン,デイモン)/妻喰い男(チョンヤン,マナット)/強制結婚(モリエール)/影と閃光・飛行ボートの怪(カミ)/橋・バケツ乗り(カフカ)/名前ねぶり・鼻かぎ嬢・引きのばし男(カネッティ)/選挙戦(フィッシェ兄弟)/白象伝説(リラダン,ヴィリエ・ド)/メカニズムの勝利(シュトローブル)/アーナンディー(アッバース,グラーム)/滑稽列伝(司馬遷)/学ぶは遊ぶなり(森敦)/笑いの練習(柳田国男)/日本人の微笑(小泉八雲)/死者を嗤う(菊地寛)/寒山拾得井伏鱒二
いよいよ年の瀬になって、通勤の乗り換えでシャトルを待つ列につきながら、本を読む指が悴むようになり、指をはああと息であたためるのがなんだかわざとらしいようですこしてれ臭い。会社の最寄り駅から富士山が朝の空気の中にくっきりと見える。やっぱりニッポンいちの山だと思う。なんたってフォルムが図抜けていい。はじめて富士山をみたのはいなかから東京にむかう飛行機の機上で、真っ平らなところに突然富士山があの形状であるものだから、冗談のようにおもって笑ってしまった。あの気分はいまも忘れない。
クリスマス前に風邪をひいた息子が、解熱したので保育園にやったらまた熱をだした。ふだんは滅多なことで泣かない息子がお迎えの母親連をみるとはカーチャンカーチャンと泣いて様子が違うので熱があると知れたらしい。わたしのような雑な母親でも、カーチャンといって甘えてくる姿をみると、いじらしいやら申し訳ないやらで鼻の奥のあたりがツーンとしてしまう。いまは熱もさがって咳が続くが、どうやら元気になったのでほっとしているところ。
世界は笑う、昼休みのデスクで読み終えた。カフカはこないだ読んだ短編集にあったとおなじ二篇が収録されてあるが、やっぱり池内紀の訳がよいのだとわかった。原典を読んだらまたちがうのかもしれんが、わたしにそのニュアンスがわかるとも思えないので、池内紀のセンスを借りて読むカフカが好きなんだということでよろしい。この本で驚きだったのはカネッティで、わたしは名前もしらん作家だったが、カフカに似た絶望的なまでにぶっ飛び具合でうれしくって怖くって心底わくわくした。名前ねぶりに鼻かぎ嬢に引きのばし男なんて、タイトルからしていかれてるが、タイトルを凌駕する内容のいかれっぷりに拍手喝采