まみ めも

つむじまがりといわれます

土曜の夜と日曜の朝

アラン・シリトー。BOOKOFFで¥105。河出書房新社。帯には「反抗的人間の苛烈な青春と労働者階級の生活感情を鋭い感覚で描く<怒れる世代>の傑作」とあった。あらすじは、本文中で主人公のアーサーが独白するとおり。

おれの人生は最後まで毎日きっとごたごたの連続だ。いままでもごたごただらけだったし、これからもずっとそうだろう。生まれついての大酒飲みが盲滅法結婚する。へんてこな狂った世界に生まれてきたのが運のつき、失業給付金で育てられ、戦争にひきずりこまれて防毒面のかぶりぞめ、耳元で毎晩サイレンに怒鳴られながら、防空壕のなかで疥癬だらけのからだが腐りそうだった。十八で軍隊に投げこまれ、やっと出てきたら工場でまた汗水たらし、一杯でも余分にビールをがっつき、週末には女どもをたぶらかして、どこの亭主が夜勤なのかを気にしながら、腐った胃腸とうずく背骨で働きまくり、はした金ほしさに月曜の朝にはかならず工場にひきもどされて。

このごたごたしまくっている彼の人生が、結婚に着地するまでの話。ちなみに、結婚とは「地獄の、眼がくらみ身の毛もよだつ絶壁のふち」なんだそうで、その絶壁のふちにいとも簡単に着地してしまうアーサーのいさぎよい矛盾具合が、若さだと思った。自分をとりまく世界のすべてを憎みあざ笑っているアーサーなんだけれども、怒りを身体じゅうにみなぎらせながらも、小説の終わりでは凪のように運命を従順に受け入れ、「だけどまあ、つまるところは、いい人生だしいい世界だよ、こっちがへこたれさえしなければ」なんちゃってすべてを肯定してしまう。そうだ、人生は肯定しなくちゃね。永井玲二という人の訳がすんごくよかった。