?(堀辰雄)/牧神の春(中井英夫)/ある学会報告(カフカ)/ある海水浴客の冒険(カルヴィーノ)/女房を寝とられた二つの肉体(エーメ)/眼玉首と脚(柴田宵曲)/刺青の話(岡本綺堂)/パーカーの背中(オコナー)/欲望と黒人マッサージ師(ウィリアムズ,テネシー)/笞刑(金東仁)/ねむい(チェーホフ)/そんなこたないす(ヒューズ,ラングストン)/便利な治療(ボンデンペルリ)/酒虫(芥川龍之介)/ヴァルドマル師の病症の真相(ポー)/そったく(幸田文)/苺の季節(コールドウェル)/二世の縁 拾遺(円地文子)/ホーデン侍従(尾崎士郎)/青塚氏の話(谷崎潤一郎)
あかんぼうが昼寝ているときに本を読むことが必然多いのだけれども、チェーホフのねむい、それは、靴屋でした働きする女の子が、朝から晩までせっせと働いて、夜は夜であかんぼうの子守、そんなわけでちっともねむれないという話、小説のしまいにはやっとねむれるのだけれども、それがまた人間のふちを覗くようなどきっとする展開だったので、ねむらないといけない気持ちにさせられて、本を閉じて寝た。この一冊は物凄いような話が多かった。谷崎潤一郎はやっぱり変態だとおもった。「そんなこたないす」というせりふが我が家で二日ほど流行。スピンはパーカーの背中に戻す。フラナリー・オコナーの作品を読んだことがなかったが、気に入った。以来、ブックオフで背表紙にオコナーの文字を探すけれどもなかなか見つからない。そのうち出会うだろうとおもう。
はじめての軽井沢、なにかリクエストはあるかと訊ねられてソフトクリームを舐めたいと答えた。それで、午後はツルヤのミカドコーヒーで、ソフトクリームを舐めた。浅間山とおんなじ、まっしろのソフトクリームを食べて満足した。それで旅の目的はおおかた達しられたも同然だった。軽井沢の夜の空気はツーンと冷たく、ばりばりにかたまった雪の上をそら歩きして懐かしんでいたら、あとの三人はそら歩きを知らなかった。オリオン座がしずかにこっちを見ていた。四人で北斗七星を探した。ひしゃくは空の下のあたりを掬い上げていた。翌日曜日に訪れた古本屋で久生十蘭、山下清、幻想小説集、推理小説集を買った。そのうち幻想小説集だけを鞄につっこみ、車の三人と別れ、高崎からマックスたにがわ、はくたかを乗り継いで金沢に着いた。あかんぼうはわたしの膝の上で終始上機嫌で、乗り合わせたさまざまの人びとにひらひらと手を振って愛想をふりまいたので、本は一度もひらかずに終わった。一週間ほど実家に過ごす。