まみ めも

つむじまがりといわれます

ブライト・ライツ、ビッグ・シティ

ブライト・ライツ、ビッグ・シティ
息子の一歳の誕生日は病室で迎えた。朝方、病棟の看護師さんがお手製のバースデーカードでお祝いしてくれた。息子はおおかた回復しつつあり、貧血がひどかったのでむこう三ヶ月インクレミンで鉄を補給することになるが、あすには退院できる経過であり、ようやく点滴の管から解放された。自由になった右手を不思議そうにながめ、昼寝している最中も右手をすっとさしあげてグーパーやって、よほどうれしいにちがいない。ぐっすり眠る息子を視界の端でとらえながら、クラウド・コレクターという本を読んだ。ちょうどきょうの空模様も曇り。曇り空のしたで田植えとおぼしきトラクターがうごいている。去年のこの日は、朝、そわそわした気持ちで産婦人科にはいったが、朝の時点でピーカンの天気が約束されたような突き抜けた空だったのを思い出す。
北浦和ブックオフで¥105だった本。これは、ちょうどこの病院にきた日、くだんの右手にカテーテルを入れられたばかりの息子が泣きつかれてねむったのを、膝に抱っこしながら読みおえた。点滴がおわるまで二時間ちかく、おなかもすいたしおしっこもしたかったが、そういうわけにもいかなかった。ベストセラーらしいがぴんと来ないまま終わり。だって、死にゆく母親が息子のセックスの話なんか聞きたいとおもうか?聞きたくねーよ。わたしはこの主人公タイプのしみったれた男はいかにも大嫌いで、いろんなエピソードが吐き気するほど気色悪く、なんかもう、ほんとうになぐってやりたい。グーで。実在しないからなぐれないのが悔しい。また、この小説が二人称で語られるスタイルで、いちいち、君はどーだ、君はこーだ、という言い方をされるものだから、気に入らないやつを自分に投影させて読むようなかたちになり、ますますむかっ腹がたつのだった。