まみ めも

つむじまがりといわれます

ベルリン天使の詩

ベルリン・天使の詩 デジタルニューマスター版 [DVD]
きもちよく晴れた日があったので散歩に出た。ポケットに鍵とケータイと財布と文庫本を一冊。たんぼの中をシガーロスをききながらとぼとぼ歩いてみたら、あぜ道のつゆくさ、土筆、かわいた犬の糞、土のぬくもり、風のにおい、車に乗っていたときには逃していたディテールが五感から否応なしでとびこんできて、ちょっとびっくりする。それにしてもつゆくさの愛らしさったらない。あぜ道、糞や雑草のなかにばらばらと散らばっている佇まいがいじらしい。野の草花を愛した三橋節子のことをすこし思い出す。私はあなたをペンペン草のように愛しています。川縁のベンチに腰かけてフィッツジェラルドの短編集をひらいたが、風がページを翻して埒があかないので三頁であきらめて帰宅。
昼ごはんのあとは家のなかで一番おおきいルパン三世のマグカップにカフェインレスのコーヒーをたっぷりつくってベルリン天使の詩。ソファにねそべってクッションを抱いていたらほとんどねむってしまったのであくる午前中にもう一度みた。ガイストを与えられたようにうっそりする映画。天使が陰気な中年だというのもよかったし、ぱっとしない日々を送るサーカスのブランコ乗りに恋するのも、コロンボが登場するのも、ぜんぶいいなあと思った。天使から人間になったときに、抽象から具体へとジャンプするあらわしかたも抜群で、モノクロームがカラーになり、雑音がきこえ、感覚がうまれる。カラーになったときに表情がずいぶんやわらかくなる。わたしたちのながめている世界のこの雑然と混沌。天使にはすべてがなまなましくあたらしい。ブランコ乗りマリオンの、誰か、名前も住んでいるところも知らないけれどたったひとりの誰かをさがしたい、愛したいっていう切実な願いにくらくらした。愛されるよりも愛したいマジで。そのとおり。