まみ めも

つむじまがりといわれます

オスカー・ワオの短く凄まじい人生

夜はこどもふたりにぴったりと挟まれ、気分はさながらキューカンバーサンドイッチの胡瓜、ねかしつけたあとはそっと胡瓜を蒲団から引き出す作業に難儀する。さる友達が、むかし、カラスにコンビニのサンドイッチを奪われたとかで、やつら、嘴で器用に胡瓜を引っ張り出してペッと捨てやがったと言っていたが、こちらはマヨネーズの塗られていない産後体型、着膨れた凸凹により摩擦係数はなかなかのもんで、カラスが胡瓜を引き抜くように容易にははいかない。モゾモゾとみのむしよろしく這い出して、途中ウウンと声をあげる子らをなだめながら寝室をあとにする。わたしが眠るときには、ふたりの眠るタイトな狭間にわたしというたたかうバディをぐいぐいねじ込んでいくと、ねぼけたセイちゃんの掌がのびてきて、頬をさわったり、耳たぶをつまんだり、あれやこれやいじられて、なんやら落ち着かんと思いながらいつのまにかねむっている。

オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス)

オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス)

図書館で予約した。これまでのブックオフ生活ではなかなかお目にかかれなそうな一冊。ドミニカのオタク青年とそのファミリーストーリー。

二人は我々ドミニカ人が休暇にやりたいと思うことを全部やった。魚のフライを食べ、川の中を歩いた。海岸沿いを散歩し、両目の奥の肉がズキズキするまでラムを飲んだ。ベリにとって、自分がいる場所を完全に好きにできるのは初めての経験だった。だからギャングがハンモックでのんびりうたた寝をしているあいだ、彼女は主婦らしく振る舞ったり、二人がじきに住む家のプランを考えたりで、忙しくしていた。朝になると小屋を猛然とこすって回り、凄まじい量の花を全ての梁からぶら下げ、あらゆる窓枠を飾りたてた。近所の人から物々交換で手に入れた食品や魚で、次から次へと豪華な料理をつくったーそうやって失われた日々に得た料理の腕を見せびらかしたのだ。そしてギャングは満足し、自分の腹を叩き、はっきりとした言葉で彼女を褒め称え、ハンモックに寝そべると柔らかい音でおならをした。彼女の耳にはそれは音楽に聞こえた!(ベリの心の中では、その週、彼女は法律以外のすべての意味で彼の妻だった)。

ものすごい情報量でありながらスピーディで、でもズシンと重たい。ふわふわ夢見ていたかと思うとこっぴどくやっつけられる。いずれ再読しなおすべきかもしれないが、いまはちょっと打ちのめされてできない。