まみ めも

つむじまがりといわれます

ナイン・ストーリーズ

入梅。さすが、雨が降るとあじさいが映える。遊歩道にはいろんな種類のあじさいが植わっていて、いたるところで花火が弾けているみたい。あじさいがなかったら、梅雨はもっとやりきれないだろうなあ。昔はあじさいなんて凡庸な花だと思っていたが、その凡庸さがどんどんよくなる。あじさいの中でも、一番ふつうの、手まり型に咲いているようなのが、 とてもいい。歳をとるとオーソドックスなものに回帰していくのかもしれない。

ナイン・ストーリーズ (新潮文庫)

ナイン・ストーリーズ (新潮文庫)

バナナフィッシュにうってつけの日 ( A Perfect Day for Bananafish )
コネティカットのひょこひょこおじさん ( Uncle Wiggily in Connecticut )
エスキモー戦争の前夜 ( Just Before the War with the Eskimos )
笑い男 ( The Laughing Man )
小舟のほとりで ( Down at the Dinghy )
エズミに捧ぐ――愛と汚辱のうちに ( For Esmé with Love and Squalor )
愛らしき口もと目は緑 ( Pretty Mouth and Green My Eyes )
ド・ドーミエ=スミスの青の時代 ( De Daumier-Smith's Blue Period )
テディ ( Teddy )
松浦弥太郎くちぶえサンドイッチで、「初恋の頃読みたかった」と書いていて、もはや取り返しようもないのだが、いまさらながら読むことにして図書館で予約。水玉の表紙がいかにも初恋してるじゃないの。どこを齧っても果実のフレッシュなみずみずしさで血を流す、初恋のころをとうに過ぎたおばさんでもたのしい一冊だった。「笑い男」がよかった。

拡げればどこまででも拡がってゆきそうな話でありながら、それでいて持ち運びが可能な本質を持っているのだ。いつでも家へ持って帰って、それを、たとえば湯につかった後で、浴槽の湯を落しながらでも思い浮かべてみることができるのである。

今回読んだのは野崎孝訳。柴田元幸の訳もあるらしい。そっちも読んでみたい。