まみ めも

つむじまがりといわれます

世界の果ての通学路

先週の土曜は在所の夏祭りだった。ちびっこ相撲があると聞きおよび、昼過ぎにいそいそと出かけていく。母屋の裏の神社のわきに、ちいさな広場があって、ミニサイズの土俵がある。おが屑が撒かれ、土俵わきには塩も盛られていた。Tシャツを脱いで、上半身をはだかになったこどもたちがテントの下に並んで待っており、保育園児から小学生まで、男女に別れ、ちいさい子から順に呼ばれて土俵にあがる。なかにはサラシでまわしをしている子供もいる。女の子はけんけん相撲で片脚をあげてぶつかり合う。仕切るのは軍配をもった中学生で、黒板に白墨でトーナメント表を即席でつくっていく。保育園のこどもには泣きだしてしまう子も多く、まさしく土俵にあがる前から勝負が決まっているのだった。セイちゃんとフクちゃんは兄弟対決をやり、セイちゃんが勝った。そのあとセイちゃんはひとつ上らしい男の子と一番とって、そっちは負けた。勝っても負けても景品のおもちゃをもらえるのでふたりともご機嫌で戻ってきた。セイちゃんは水鉄砲と笛、フクちゃんはシャボン玉をもらった。汗と土とおが屑をシャワーで流し、ぬるい西瓜をしゃくった。

辺境で通学するこどもたちのドキュメンタリー映画

<ケニア 片道15km 2時間>
野生のキリンや象が生息するサバンナを毎日駈け抜けるジャクソン(11歳)夢:パイロット <アルゼンチン 片道18km 1時間30分>
山羊飼いの仕事を終えてから、愛馬で学校へ向かうカルロス(11歳)夢:獣医 <モロッコ 片道22km 4時間>
女子に教育は不要とする古い慣習が残る村から、寄宿学校に通うザヒラ(12歳)夢:医師<インド 片道4km 1時間15分>
生まれつき足が不自由で、弟たちに車椅子を押されて登校するサミュエル(13歳)夢:医師

わたしの小学校のときの通学路の思い出は、学校の植込みのつつじの花をチュッと吸ったこと、途中にあるおかあさんが働いていた工場で砂糖とクリープをたっぷりいれたインスタントコーヒーを飲ませてもらったこと、たけちゃんの家の隣の草っぱらでおしっこしたこと、夏のプール帰りに川に入って遊んだこと、本を読みながら歩いていたら電信柱に頭をぶつけて、びっくりしてみたら家の前をとっくに通り過ぎていたこと、おかあさんのいない幼なじみになんの気なしにおかあさんのことを聞いてしまって気まずい思いをしたこと、ざんざん降りに降られて雨と晴れの境目をみつけたこと。30年近くが過ぎて、いつしかインスタントコーヒーは、なんにも入れずに飲むようになったけれど、ときどき、砂糖とクリープをたっぷり入れたコーヒーをつくって啜ると、あのころを思い出す。