70年目の広島の原爆忌。供養塔に通いつづけた95歳の被爆者の女性をテレビで知った。原爆投下後、おかあさんを探すのに、見た目には誰かもわからなくなってしまった人たちがごろごろして、顔がわからないでも声ならわかるだろうと傷ついた人たちを踏んづけて歩き、呻き声で母親を探したという話をしていた。その苦しみの声が耳から離れていかない、毎日があの日です、と言った。毎日があの日です。絶望に満ち満ちた1日を70年繰り返すという果てしのなさに目がくらむ。
- 作者: 開高健
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1992/05/01
- メディア: 文庫
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「一本のワインには二人の女が入っている。一人は栓をあけたばかりの処女、もう一人は、それが熟女になった姿である」―。酒、食、色、人、エトセトラ。恐怖の博覧強記作家・開高健が知性と痴性をブレンド、男の世界の森羅万象を語り尽くす教養エッセイ50章。1ページに一度はニヤリと笑い、ウーンと唸ります。
80年代プレイボーイの連載を収録したエッセイ集。開高健の軽妙なくせに陰気な語り口が癖になり、ブックオフで均一棚にあると必ず買ってしまう。なんの役にもたたない情報がはち切れんばかりにつめこまれて、たしかに教養とはこういうものだったなとおもう。役にたたないことばかり読み、すぐに忘れ、この繰り返しがいつまでも続くといい。