まみ めも

つむじまがりといわれます

旅行者の朝食

先週ずっとなくしものをして落ちこんでいたのがふとした拍子にみつかった。中には社員証やクレジットカードの類いがしまってあり、始末書を覚悟していたので心底ほっとした。交番で遺失物の届けをだしたり、カードの取引停止の手続きをして、おのれの不注意で他人を煩わせていることが情けなく、わが身の社会的適性を疑ったけれども、ちょっと考えてみれば娘としての適性、姉や妹としての適性、妻としての適性、母としての適性、これまでの人生のシーンでいろいろの適性がそもそもあるとは思えないのだった。ぼんやりするのが一番性に合っている気がするけれども、なんの役にもたたないし、なにかの役に立ちたいというような大それたことは本当のところは思っていない。人生を可能な限りそつなくこなしたい。週末にでた友達の結婚パーティー、席次表のネームカードにメッセージがしたためてあり、なつかしい字で、会えてよかった、とあって、そんな風におもってくれる友人がいるということだけで自分に百点満点をあげたい。高校生のころ、毎日文字どおり笑い転げながら自転車をこいだ日々を思い出す。あのころしゃべり倒した内容は、シャンパンの泡のように気持ちよくはじけて、中身はたいしてなかったので思い出せないけれど、本当にきらきらしていた。

旅行者の朝食 (文春文庫)

旅行者の朝食 (文春文庫)

図書館の本棚にあるのをいつか借りようと思っていたいつかが来た。「グレーテルのかまど」でやっていたハルヴァのことも書いてあった。

「大食い早食い」通訳を自称する著者、初めての食にまつわるエッセイ集。旧ソ連時代の奇妙な缶詰や幻の蜜飴など、美味珍味が勢揃い。『文芸春秋』はじめ雑誌、新聞等に掲載されたエッセイに加筆、書き下ろしを加える。

食いしん坊のひとが書いた食のエッセイなのでおもしろくないはずがない。デートで相手がひいてしまうほどの食いしん坊の米原万里さんが素敵。そういえば、デートのときに食べるところを見られるのがはずかしく、胸もいっぱいになってお腹が空かない、食べないでアルコールばかりがぶ飲みして、はやくわけがわからなくなりたいようなところがあったっけ。豆腐ようやチャンジャ、かさのないおつまみばかり頼んでチビチビ食べた。あのころの痛々しい気持ちと発酵くさい口臭が忘れられない。