まみ めも

つむじまがりといわれます

青春群像

庭のかめの中にいためだかが、ついにいなくなってしまったらしい。ひそかにオドラデクと呼んで、この冬を越したのを確かめた矢先に姿がみえなくなった。そのくせかめの中に死骸もみえないので、なんだか幻のようだ。家のリフォームをやった6年前に庭師のひとがかめに入れてくれた中で1匹だけ生き残り、夏の暑熱でかめの中が藻でにごっても、雨にたたかれても、冬の氷のしたでも、タフに6年弱を生き抜いてきたオドラデクだったけれど、春がきてあたたかくなってほっとして死んでしまったにちがいない。山で遭難したときに、救助の人が来たのをみつけてほっとするとそれで気が抜けて死んでしまうのでほっとしないようにいきなり殴りつける、というのがあった気がするのに、宿氏は知らないというので自信がなくなってしまう。宿氏もロビンソンの不在を悲しんでいる(宿氏はロビンソンと呼んでいたらしい)。蓮の花がかめの中にひっそりと咲いた初夏のオドラデクのことを忘れない。忘れないつもり。

青春群像【デジタル・リマスター版】 [DVD]

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プレミアムシネマの録画。フェデリコ・フェリーニ監督作品。原題はI Vitelloni(イ・ヴィタローニ:雄牛)。1953年のモノクローム

北イタリアのある町に生まれ育ち、生きる目的もなく自立もできずにいる5人の青年。妊娠させた娘と結婚しても女遊びをやめられないファウスト、姉から小遣いをせびり取るアルベルト、いちばん年下で内向的なモラルド、劇作家志望のレオポルド、そして歌の上手なリッカルド。日々なすすべもなく仲間と時を過ごすだけの生活に嫌気がさしたモラルドは、ある日、一人列車に乗って町から去って行く…。ベネチア映画祭銀獅子賞受賞。

フェデリコ・フェリーニの作品は午前10時の映画祭で「道」を見たことがあった。「道」は「青春群像」の翌年の1954年製作、旅芸人の男と男に買われた女の話で、とことんひどい男とばかな女が描かれていたことだけを覚えている。「青春群像」でも、男はやっぱりひどく、女はばかだった。