まみ めも

つむじまがりといわれます

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復職してしばらくしてできたばかでかい口内炎がなかなか治らず、鏡の前に立つたびに膨れ上がった下くちびるが気になってしまい、ひと月たったころから人知れず不安になりだして、ビタミンの錠剤をのんでも効かず、くちびるが少しめくりあがるほど巨大化し、ふた月めにいろんな病名が頭の中に去来したけれども、3か月に突入する目前でやっとなくなった。だんだんちいさくなりかけてきて、いやいやまだまだ油断禁物となんとなく落ち着かなかったのが、ついに消えたので、張本さんに怒られないぐらいにさりげないガッツポーズをひとり鏡の前でキメた。くちびるの裏側をべろでなぞって確かめる癖だけが残った。あんなに確かだったものも、なくなってしまう。

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ト本。

アメリカ文学の静かな巨人」、リディア・デイヴィスのユニークな小説世界はここから始まった。彼女の作家としての本質がよくわかる表題作をはじめ、「オーランド夫人の恐れ」「魚」などを収めた短編集。 
話 p7-12
オーランド夫人の恐れ p13-18
意識と無意識のあいだ−小さな男− p19-25
分解する p26-37
バードフ氏、ドイツに行く p38-47
彼女が知っていること p48
魚 p49
ミルドレッドとオーボエ p50-51
鼠 p52-57
手紙 p58-66
ある人生(抄) p67-73
設計図 p74-87
義理の兄 p88-90
W・H・オーデン、知人宅で一夜を過ごす p91
母親たち p92-93
完全に包囲された家 p94
夫を訪ねる p95-96
秋のゴキブリ p97-101
骨 p102-104
私に関するいくつかの好ましくない点 p105-112
ワシーリィの生涯のためのスケッチ p113-129
街の仕事 p130-131
姉と妹 p132-134
母親 p135
セラピー p136-143
フランス語講座その1 Le Meurtre p144-153
昔、とても愚かな男が p154-158
メイド p159-166
コテージ p167-170
安全な恋 p171
問題 p172
年寄り女の着るもの p173-178
靴下 p179-183
情緒不安定の五つの徴候 p184-196 

リディア・デイヴィスの作品にはありえないような人ばかりでてくるというのに、ありえない人びとの記述の至るところに身に覚えがある歪みがひそんでいて、しんどいような愉快なような気分がする。